親や親族の相続が現実味を帯びると、空き家の管理や費用が気になる方も少なくありません。
- 親の実家を相続することになりそうだが、使う予定がない
- 相続放棄すれば、空き家と完全に関わらずに済むのか知りたい
- 売却や活用も含め、自分に合う方法を比較したい
固定資産税や修繕費などの負担を考え、相続放棄を検討する方もいるでしょう。ただし、相続放棄では、空き家だけを選んで手放すことはできません。
預貯金などのプラスの財産も含め、相続財産をまとめて放棄する手続きです。
また、2026年7月時点では、相続放棄をしても空き家の管理義務が残ることがあります。放棄すれば必ず管理や費用の負担から離れられるとは限りません。
空き家の状態によっては、相続して売却する方法や、賃貸などに活用する方法が適していることもあります。相続放棄を選ぶ前に、財産全体や今後かかる費用を整理することが大切です。
本記事では、空き家を相続放棄するメリット・デメリットを初心者向けに解説します。あわせて、放棄後に残る管理義務や費用、手続きの流れ、放棄以外の選択肢も取り上げます。
本記事を読むことで、わが家の空き家を相続放棄すべきかを整理し、次に取るべき行動を具体的に検討しやすくなります。
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空き家の相続放棄とは?まず知っておきたい基本

相続放棄とは、空き家を含む相続財産を一切受け継がないための手続きです。単に空き家の所有権を手放す方法ではなく、預貯金や借金なども対象です。
空き家だけを放棄したり、親族間の話し合いだけで相続人から外れたりすることはできません。まずは相続財産の全体像を確認し、手続きの意味を理解しましょう。
相続放棄とは
相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の権利や義務を一切受け継がないための手続きです。
相続放棄をする人が、被相続人の最後の住所地を担当する家庭裁判所に相続放棄を申し立てます。この申立てを、法律上は「申述」といいます。
相続の対象になる主な財産の例は、次のとおりです。
| 財産の種類 | 主な例 |
|---|---|
| プラスの財産 | 空き家、土地、預貯金、有価証券、自動車など |
| マイナスの財産 | 借金、未払金、他人の借金を保証する義務(保証債務)など |
相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」で、財産を受け取らないと合意することとは、法的な効果が異なります。相続放棄が受理されると、初めから相続人ではなかったものとみなされます。
空き家「だけ」を選んで相続放棄することはできない
相続放棄では、空き家だけを選んで手放すことはできません。被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を、すべてまとめて放棄するのが原則です。
例えば、次のような選び方はできません。
- 自宅は相続し、借金だけを放棄する
- 預貯金は受け取り、空き家だけを放棄する
- 価値のある土地は受け取り、売れない土地だけを放棄する
空き家の維持費が負担になりそうでも、ほかに多額の預貯金があるかもしれません。反対に、空き家に一定の価値があっても、それを上回る借金が見つかることもあります。
相続放棄を判断する際は、空き家だけでなく、財産と債務の全体を調べることが必要です。空き家の価値や売却可能性も確認した上で、放棄によって失う財産がないかを整理します。
相続放棄すると相続権は次の順位の人に移る
相続放棄をすると、同順位の相続人や次順位の親族が相続人になることがあります。ただし、1人が放棄すれば、直ちに次順位へ移るとは限りません。
法定相続人の順位は、次のように定められています。
| 相続順位 | 相続人になる人 |
|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 |
| 第1順位 | 子ども・子どもが先に亡くなっている場合は孫など |
| 第2順位 | 父母や祖父母 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹・兄弟姉妹が先に亡くなっている場合はおい、めい |
同じ順位の相続人が残っている場合は、その人たちが引き続き相続人になります。先順位の相続人が全員放棄すると、次順位の親族が相続人になるルールです。
例えば、被相続人に配偶者と子ども2人がいるとします。子どものうち1人だけが放棄した場合、配偶者と残った子どもが相続人です。
子ども2人がともに放棄した場合は、被相続人の父母などが第2順位として相続人になることがあります。父母や祖父母もいなければ、兄弟姉妹などが第3順位の相続人です。
空き家や借金の問題が次順位の親族に移る可能性もあります。相続放棄を検討するときは、ほかの相続人や親族への影響も整理しておきたいところです。
相続放棄を検討したほうがよいケース(判断の目安)
相続放棄が適しているかは、空き家の状態だけでは判断できません。ほかの財産や借金、売却の可能性などを含めた確認が必要です。
相続放棄を検討する主な目安を、以下の表に整理しました。
| 状況 | 確認すべき点 |
|---|---|
| 借金が財産を上回る可能性がある | 債務額とプラスの財産を調査する |
| 空き家を利用する予定がない | 売却や賃貸が可能かを確認する |
| 遠方にあり管理が難しい | 管理を委託する費用も含めて比較する |
| 修繕や解体が必要になる | 工事費用と物件の価値を比べる |
| 固定資産税や維持費が負担になる | 将来かかる費用を見積もる |
| 買い手が見つかりにくい | 買取や寄付などの選択肢も調べる |
これらに当てはまっても、「必ず」相続放棄が適しているとは限りません。空き家を売却できれば、維持費を負担せずに現金を残せる可能性もあります。
一方、財産調査により多額の債務が見つかった場合は、期限内の判断が重要です。財産関係が複雑なときは、相続財産に手を付ける前に弁護士などへ相談してください。
参考:裁判所 相続の放棄の申述
空き家を相続放棄するメリット・デメリット

空き家の相続放棄には、維持費や債務を引き継がずに済む利点があります。一方、預貯金などの財産も受け取れず、ほかの親族に影響が及ぶ点には注意が必要です。
当メディアの調査では、実家の相続に前向きでない166名のうち、約43.4%が「固定資産税・維持費の負担」を理由に挙げました。「老朽化・修繕費がかかりそう」と答えた人も約35.5%です。
費用への不安が、実家を相続するかどうかの判断に影響していることがうかがえます。(当メディア調査・2026年6月/回答300名)
メリット
相続放棄の主なメリットは、空き家だけでなく借金なども引き継がずに済むことです。被相続人の債務が財産を上回る場合は、相続による経済的な負担を避けられます。
ただし、空き家を相続した場合、所有者には継続的な費用や管理の手間が生じます。具体的に想定される負担は、次のとおりです。
- 固定資産税
- 火災保険料
- 管理会社への委託費
- 草木の手入れや清掃費
- 老朽化した部分の修繕費
- 売却前の残置物処分費や解体費など
相続放棄が認められれば、原則として空き家を所有者として引き継ぐことはありません。将来の固定資産税や通常の維持費を負担する立場から離れられるでしょう。
遠方にある空き家では、現地へ通う時間や交通費も軽視できません。売却の見込みが乏しい物件では、長期にわたる管理から離れられる点も利点です。
ただし、相続放棄時に空き家を現に占有している人には、引渡しまで保存義務が残ることがあります。放棄によって直ちにすべての関係がなくなるとは限りません。
デメリット
相続放棄の大きなデメリットは、空き家以外の財産も受け取れなくなることです。預貯金や有価証券などに価値があっても、一部だけを残すことはできません。
相続放棄の前に確認したい主な不利益は、次の5つです。
- プラスの財産もすべて手放す
- 受理された後は原則として撤回できない
- 空き家に売却価値があっても取得できない
- 同順位や次順位の親族が相続人になることがある
- 現に占有している場合は保存義務が残ることがある
空き家は、古く見えても土地に一定の価値があるかもしれません。調査をせずに放棄すると、売却によって得られたはずの財産も失うおそれがあります。
また、先順位の相続人が全員放棄すると、父母や兄弟姉妹などが相続人になることがあります。空き家や債務の問題がほかの親族に移るため、事前に状況を共有しておくことも大切です。
相続放棄が適しているかは、維持費の大きさだけでは決まりません。財産と債務を洗い出し、空き家の売却可能性も確認した上で比較する必要があります。
相続放棄をしても空き家の「管理義務」は残る

相続放棄をすれば、すべての人が空き家の管理から直ちに離れられるとは限りません。放棄した時点で空き家を現に占有している人には、一定の義務が残ります。
一般には「管理義務」や「管理責任」と呼ばれますが、民法940条が定めているのは「保存義務」です。
2026年7月時点の基本的なルールを、以下の表にまとめました。
| 確認項目 | 基本的なルール |
|---|---|
| 義務を負う人 | 相続放棄時に空き家を現に占有している人 |
| 義務の内容 | 自分の財産と同程度の注意をもって空き家を保存する |
| 義務が続く期間 | 相続人または相続財産清算人に引き渡すまで |
| 占有していない人 | 相続放棄者というだけで一律に保存義務を負うわけではない |
ここでいう保存義務は、所有者として空き家を活用し続ける義務ではありません。次の引受人に渡すまで、空き家の状態を適切に保つための義務を指しています。
なぜ相続放棄後も管理義務(管理責任)が残るのか
占有している空き家を引継ぎ先がないまま放置すると、周囲に悪影響が及ぶ危険があります。例えば、雑草が生い茂ることで周辺住民に迷惑がかかってしまいます。
そこで、民法940条では、放棄時に相続財産を現に占有している人に保存義務を課しています。義務の内容は、次の引受人へ渡すまで財産の状態を保つことです。
空き家の場合、財産の状態を保つための行為(保存行為)として、以下のような対応が考えられます。
- 玄関や窓を施錠する
- 雨漏りや部材の落下などの危険を確認する
- 必要に応じて最低限の補修や安全対策を行う
- 敷地内の草木が周囲に著しく影響しないようにする
どこまでの対応が必要かは、建物の状態や周辺環境によって異なります。大規模な改修や活用まで求められるとは限らず、個別の状況に応じた判断が必要です。
管理義務を負うのは「現に占有している人」だけ
2023年4月1日に施行された改正民法940条では、保存義務を負う人が明確になりました。対象となるのは、相続放棄をした時点で、その財産を「現に占有している人」です。
空き家を現に占有しているかを判断する際は、主に次の事情が考慮されます。
| 占有している可能性がある事情 | 注意点 |
|---|---|
| 相続した空き家に住んでいる | 現実に建物を使用しているため、占有者に当たる可能性が高い |
| 自分の家財や荷物を保管している | 荷物の内容や保管状況を含めて判断される |
| 空き家の鍵を保有している | 鍵を持っているだけで必ず占有者になるとは限らない |
| 定期的に出入りして管理している | 管理の方法や空き家との関わり方によって判断が異なる |
各都道府県向けに出された「相続放棄者の空き家の管理責任の考え方について(情報提供)」によると、自分の家財を保管している場合や、鍵を持っている場合には、占有者に当たる可能性があるとしています。
ただし、現に占有しているかは、個別の事情をもとに判断されます。
そのため、「実家の鍵を持っているから必ず義務を負う」とは言い切れません。判断に迷う場合は、空き家に手を加える前に弁護士に確認することが大切です。
参考:国土交通省住宅局住宅総合整備課 相続放棄者の空き家の管理責任の考え方について(情報提供)
管理義務はいつまで続くのか
民法940条の保存義務は、空き家を相続人または相続財産清算人に引き渡すまで続きます。単に相続放棄が受理されただけでは、義務が終了しないケースもあるため注意しましょう。
主な終了時点は、以下を参考にしてください。
| 空き家の引受先 | 保存義務が終了する時点 |
|---|---|
| 同順位または次順位の相続人 | その相続人へ空き家を引き渡した時 |
| 相続財産清算人 | 選任後、清算人へ実際に引き渡した時 |
相続財産清算人とは、相続人がいない場合に、相続財産の管理や清算を行う人です。家庭裁判所への申立てにより選任されます。
注意したいのは、清算人の選任を申し立てただけでは、保存義務が終わらない点です。家庭裁判所による選任後、空き家を実際に引き渡す必要があります。
相続人が誰も残っていない場合は、引渡し先を確保するための手続きが必要です。
管理義務を怠るとどうなる
保存義務を負う人が必要な対応を怠ると、建物の状態によっては周囲に被害が及ぶおそれがあります。
ただし、相続放棄者が常に責任を負うわけではなく、占有状況や対応内容などを踏まえて判断されます。
想定される主な影響は、次のとおりです。
| 空き家の状態 | 生じるおそれ |
|---|---|
| 屋根や外壁が著しく劣化している | 部材の落下や建物の倒壊により、通行人や隣家に損害が生じる |
| 施錠されず、人が出入りできる | 不法侵入や火災が発生し、周囲に延焼する |
| 樹木や雑草が伸びている | 隣地への越境や害虫の発生につながる |
| 衛生状態が悪化している | 悪臭やごみにより、近隣の生活環境に影響する |
| 危険な状態のまま放置している | 自治体による指導や勧告の対象になる |
民法940条の保存義務を負う占有者は、法律上も空き家を管理する立場の「管理者」に当たると考えられています。
空き家が管理不全空家等に該当すれば、市区町村から指導や勧告を受ける可能性があります。
管理不全空家等とは、適切に管理されず、このまま放置すれば、倒壊など周囲に深刻な影響を及ぼすおそれのある「特定空家等」になる可能性がある空き家です。
市区町村は所有者や管理者に改善を求め、対応されない場合は勧告(対応を促すこと)ができます。
相続放棄を検討している段階では、空き家が危険な状態にないかを確認しておきましょう。保存義務が残る可能性がある場合は、引渡し先の確保も早めに進めることが大切です。
空き家を引き渡す際は、鍵や関係書類を渡すだけでなく、建物の状態も記録しておくと安心です。外壁や屋根、室内などを写真に残し、引渡しの相手や日付も確認できるようにしておくと、保存状況や管理の経過を整理しやすくなるでしょう。
また、民法940条の保存義務と、空家等対策特別措置法による行政上の措置は別の制度です。相続放棄後の保存義務があるかどうかだけで、自治体からの指導や勧告の対象者が決まるわけではありません。
誰が空き家の所有者や管理者に当たるかは、個別の状況に応じて判断されます。
空き家の管理義務から解放される方法

相続放棄後も保存義務が残る場合は、空き家の引渡し先を確保する必要があります。相続人がいなければ、相続財産清算人の選任を検討するのが一般的です。
参考:裁判所 相続財産清算人の選任
相続財産清算人の選任をする
相続財産清算人は、相続放棄をすれば自動的に選ばれるわけではありません。家庭裁判所への申立てと審理を経て、必要性が認められた場合に選任されます。
例えば、相続人全員が相続放棄し、結果として相続する人がいなくなるケースが典型例です。このような状況では、家庭裁判所が申立てにより相続財産清算人を選任します。
相続財産清算人が行う主な業務は、次のとおりです。
- 残った財産を国庫に帰属させる
- 被相続人の債権者に債務を支払う
- 空き家などの財産を売却・処分する
- 預貯金や不動産などの相続財産を管理する
清算人には、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。申立人が候補者を挙げても、その人が必ず選任されるわけではありません。
また、申立てができるのは、被相続人にお金を貸していた人など、相続財産の清算によって法律上の影響を受ける利害関係人、もしくは検察官です。相続放棄をした人が利害関係人に当たるかは、個別の事情によって判断されます。
申立書の作成は司法書士、代理や法的判断は弁護士に相談できます。自分が申立人になれるか分からない場合は、専門家に確認してください。
選任の申立てから管理義務の解放までの流れ
相続財産清算人が選任されても、その時点で保存義務が終わるとは限りません。清算人に空き家を実際に引き渡すことが必要です。
申立てから引渡しまでの流れは、以下の表に沿って進みます。
| 流れ | 内容 |
|---|---|
| 1.相続人を確認する | 戸籍謄本や、相続放棄が受理されたことを証明する相続放棄申述受理証明書などを集める |
| 2.申立書類を準備する | 財産の一覧表(財産目録)や不動産の資料、申立ての利害関係を示す資料を用意する |
| 3.家庭裁判所に申し立てる | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する |
| 4.予納金などを納める | 裁判所から指示された金額を申立人が納付する |
| 5.清算人が選任される | 裁判所が適任者を選任する |
| 6.清算人に引き渡す | 空き家の鍵、関係書類、管理状況などを共有する |
| 7.保存義務が終了する | 空き家の引渡しが完了した時点で義務を離れる |
申立てでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍や財産資料などが必要です。相続関係によっては、多数の戸籍を集めることになります。
裁判所による確認や、関係者に手続きを知らせる公告を伴うため、選任までには一定の時間がかかります。その間に保存義務を負っている場合は、必要な安全対策を続けることが大切です。
予納金の目安と、誰が負担するのか
相続財産清算人の選任には、申立手数料などの費用がかかります。
2026年7月時点の主な費用は、以下のとおりです。
| 費用 | 金額・負担方法 |
|---|---|
| 収入印紙 | 800円 |
| 郵便料 | 裁判所によって異なる |
| 官報公告料(国が発行する官報に手続きを掲載する費用) | 5,582円 |
| 予納金(清算人の報酬や管理費用として事前に納めるお金) | 財産の内容や裁判所によって異なる |
予納金は、相続財産だけでは費用が不足する可能性がある場合に、申立人が納付します。
なお、全国一律の金額は決まっていません。必要額は、地域や裁判所の運用、財産の規模、空き家の状態によって変わります。
清算手続きの中で現金を確保できれば、予納金が返還されることもあります。一方、管理費用や清算人の報酬に使われた場合は、全額または一部が戻らない可能性もあるため注意が必要です。
空き家の解体費用は誰が負担する?
空き家の解体費用を誰が負担するかは、相続や清算手続きの状況によって異なります。
代表的な場面を、次の表に整理しました。
| 状況 | 解体費用 |
|---|---|
| 空き家を相続した人が解体 | 原則として所有者が負担する |
| 清算人が処分のために解体 | 相続財産から支出されることがある |
| 相続財産に現金がない | 予納金や追加費用が必要になる可能性がある |
| 相続放棄後に保存義務だけが残っている | 相続財産清算人の選任や費用負担の調整が必要 |
また、解体費用は、地域や物件による差が大きいため、全国共通の金額は示せません。見積もりを取る際は、建物本体だけでなく次の費用も確認したいところです。
- 樹木や塀の撤去費
- 家財や残置物の処分費
- アスベストの調査・除去費
- 重機を搬入するための費用
- 建物の解体を登記簿に反映する建物滅失登記の費用
なお、相続放棄後に空き家を勝手に解体すると、財産の処分をめぐる問題が生じるおそれがあります。保存義務を負っていても、大きな処分を行う前に弁護士に相談してください。
相続放棄の手続きの流れと注意点

相続放棄は、親族間で「財産を受け取らない」と合意するだけでは成立しません。
亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄の申述を行う必要があります。
手続きには原則3か月の期限がありがあり、その間の行動によっては相続を承認したとみなされることもあります。2026年7月時点のルールを確認し、財産に手を付ける前に準備を進めることが大切です。
参考:裁判所 相続の放棄の申述
手続きの流れ(家庭裁判所への申述)
相続放棄を検討するときは、空き家だけでなく、預貯金や借金なども調べます。財産の全体像を確認した上で、期限内に家庭裁判所へ申述書を提出しなければなりません。
手続きは、おおむね以下の順序で進みます。
| 流れ | 行うこと | 注意点 |
|---|---|---|
| 1.相続人を確認する | 戸籍を取り寄せ、相続順位を調べる | 自分が相続人になった時期も確認する |
| 2.財産と債務を調査する | 空き家、土地、預貯金、借金などを洗い出す | 調査中に財産を処分しない |
| 3.放棄するか判断する | 財産の価値や維持費、債務を比較する | 空き家だけを選んで放棄することはできない |
| 4.必要書類を準備する | 申述書や戸籍謄本などを集める | 相続順位によって必要書類が異なる |
| 5.家庭裁判所へ申述する | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する | 原則として3か月以内に行う |
| 6.裁判所からの照会に回答する | 放棄の意思や財産の処分状況などを回答する | 期限内に事実を正確に記載する |
| 7.受理の通知を確認する | 相続放棄が受理されたことを知らせる相続放棄申述受理通知書を受け取る | 通知書は大切に保管する |
申述に必要な費用は、申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便料です。郵便料は家庭裁判所によって異なるため、提出先の案内を確認してください。
裁判所から照会を受けた場合は、相続を知った時期や遺産を処分していないかなどを確認し、指定された期限までに返送しましょう。
期限は「3か月(熟慮期間)」を過ぎると原則できない
相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行います。この判断期間を「熟慮期間」といいます。
起算日は、必ずしも被相続人が亡くなった日ではありません。例えば、先順位の相続人が全員放棄したことを後から知り、自分が相続人になった場合は、その事実を知った時期が関係します。
熟慮期間内に何も手続きをしなかった場合は、原則として単純承認をしたものとみなされます。単純承認とは、空き家や預貯金だけでなく、借金などの義務も制限なく引き継ぐことです。
判断に必要な情報がすぐにそろわない場合は、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てられます。伸長は自動的に認められるわけではないため、3か月が経過する前に手続きを進めなければなりません。
参考:裁判所 相続の承認又は放棄の期間の伸長
遺品整理・売却・修繕は「法定単純承認」に注意(放棄できなくなる場合がある)
相続放棄を検討している間は、相続財産の扱いに注意が必要です。民法921条では、相続人が相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認をしたものとみなすと定めています。
本人が明確に承認すると伝えていなくても、一定の行動によって承認した扱いになることを「法定単純承認」といいます。
特に注意したいのは、次のような行為です。
| 行為 | 相続放棄への影響 |
|---|---|
| 空き家や土地を売却する | 相続財産の処分に当たり、放棄できなくなるおそれがある |
| 空き家を独断で解体する | 建物の処分と判断される可能性がある |
| 高価な遺品を形見分けする | 財産的価値があれば、処分とみなされるおそれがある |
| 預貯金を引き出して自分で使う | 相続財産の私的な消費として問題になりやすい |
| 自動車や貴金属を売る | 財産を売却して現金化する行為や処分に該当する |
| 大幅な改築や用途変更を行う | 保存の範囲を超える処分と判断されることがある |
| 明らかなごみを処分する | 内容や量によって判断が分かれる |
| 危険を防ぐ最低限の補修を行う | 保存行為として認められる余地がある |
一方で、民法921条は、状態を維持するための「保存行為」は除外しています。そのため、空き家の修繕や遺品整理を行っただけで、必ず相続放棄ができなくなるわけではありません。
例えば、雨漏りの応急処置や割れた窓の養生は、被害の拡大を防ぐ保存行為に当たります。
一方、建物を大幅に改築したり、価値のある家財を親族で分けたりすると、処分と評価されるおそれがあります。
どこまでが保存行為で、どこからが処分に当たるかは、行為の目的や財産的価値によって異なるため注意しましょう。空き家に手を加える必要があるときは、作業前に弁護士に相談するのが安全です。
手続きに必要な書類
相続放棄では、全員に共通する書類に加え、被相続人との関係を示す戸籍が必要です。申述人が子どもなのか、父母なのか、兄弟姉妹なのかによって提出範囲が変わります。
まず準備する共通書類は、以下のとおりです。
- 相続放棄申述書
- 相続放棄をする人の戸籍謄本
- 申述人1人につき800円分の収入印紙
- 家庭裁判所が指定する連絡用の郵便料
- 被相続人の住民票除票(亡くなった人の住民票)
申述人の立場ごとに必要となる主な戸籍は、以下の表で確認できます。
| 申述人 | 追加で必要となる主な書類 |
|---|---|
| 配偶者 | 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本 |
| 子ども | 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本 |
| 本来の相続人に代わって相続する孫など(代襲相続人) | 本来の相続人が死亡したことを示す戸籍謄本 |
| 父母・祖父母 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など |
| 兄弟姉妹 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍や、直系尊属の死亡を示す戸籍など |
| おい・めい | 兄弟姉妹の死亡を示す戸籍謄本など |
相続関係によっては、閉鎖された戸籍の写しである除籍謄本や、戸籍の作り替え前の内容を記録した改製原戸籍を複数集める必要があります。
ほかの相続人によって、すでに同じ戸籍が提出されている場合は省略できることもあるため、管轄の家庭裁判所へ確認してください。
未成年者が相続放棄する場合は、親権者など、本人に代わって手続きをする「法定代理人」による対応が原則です。ただし、親権者と未成年の子どもが同じ相続の相続人であり、子どもだけを放棄させる場合は、両者の利益が対立する可能性があります。
このようなケースでは、家庭裁判所による特別代理人の選任が必要になることがあります。複数の未成年者のうち、一部だけを放棄させる場合も同様です。
参考:裁判所 特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)
相続放棄する前に検討したい「手放す」ほかの選択肢

空き家を手放す方法は、相続放棄だけではありません。物件に一定の価値があれば、相続後に売却したり、賃貸物件として活用したりする方法も考えられます。
ただし、適した方法は、空き家の立地や状態、解体費用、家族の希望などによって異なります。
当メディアの調査では、相続した実家に自分が住まない場合の扱いについて、約36.7%が「まだ決めていない・分からない」と回答しました。一方、「売却したい」と答えた人は約30.3%です。空き家の扱いを決めかねている人が多いことからも、相続放棄だけに絞らず、複数の方法を比較することが大切だと分かります。(当メディア調査・2026年6月/回答300名)
売却する(相続して売る)
空き家や土地に一定の市場価値がある場合は、相続した後に売却する方法も選択肢の1つです。売却代金から費用や税金を差し引いても財産が残るなら、相続放棄より有利になる可能性があります。
空き家を売却する方法は、主に次の2つです。
| 売却方法 | 仕組み | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 仲介売却 | 不動産会社が一般の買主を探す | 売却価格、期間、仲介手数料 |
| 不動産会社による買取 | 不動産会社が直接買い取る | 買取価格、引渡し条件、残置物の扱い |
相続した不動産を売却するには、亡くなった人から相続人に不動産の名義を変更する「相続登記」を済ませる必要があります。
相続登記は2024年4月1日から義務化されており、原則として不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。
相続登記などの手続きを専門家に依頼する場合の費用や選び方は、下記の記事で詳しく解説しています。

参考:法務省 相続登記の申請義務化について
相続土地国庫帰属制度を利用する
相続土地国庫帰属制度とは、相続などで取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き渡せる制度です。2023年4月27日に始まり、空き家の相続放棄とは別の制度として設けられています。
制度の主なポイントは、以下の表にまとめました。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請できる人 | 相続などによって土地を取得した所有者 |
| 申請先 | 土地を管轄する法務局・地方法務局の本局 |
| 対象 | 一定の要件を満たす土地 |
| 審査手数料 | 土地1筆につき1万4,000円 |
| 承認後の費用 | 原則として10年分の管理費用に相当する負担金 |
| 所有権が移る時点 | 承認後、負担金を納付した時 |
注意したいのは、建物がある土地は申請できないことです。空き家が残っている場合は、原則として建物を解体した上で、土地がほかの要件も満たすか確認しなければなりません。
負担金は、登記上の土地の単位である1筆につき20万円が基本ですが、土地の種類や所在地、面積によって20万円を超えることがあります。審査手数料は、申請を取り下げた場合や不承認になった場合でも返還されません。
また、申請しても、負担金を納めて所有権が国に移るまでは、申請者が土地を管理します。制度を利用できるか判断しにくい場合は、法務局の事前相談や専門家への相談を活用してください。
参考:法務省 相続土地国庫帰属制度について
自治体・法人への寄付/賃貸として活用する
空き家や土地の立地、状態によっては、自治体や法人に寄付したり、賃貸物件として活用したりする方法もあります。
それぞれの特徴を整理すると、以下のようになります。
| 方法 | 主な特徴 | 向いている物件 |
|---|---|---|
| 自治体への寄付 | 公共施設や道路などに利用される可能性がある | 自治体に利用目的がある土地 |
| 法人への寄付 | 公益事業や地域活動に活用されることがある | 法人の事業目的と合う物件 |
| 一般住宅として賃貸 | 家賃収入を得られる可能性がある | 住宅需要があり、居住できる状態の建物 |
| 店舗・事業用として活用 | カフェや事務所などへの転用を検討できる | 立地や建物が用途に適している物件 |
| 空き家バンクに登録 | 購入・賃借希望者とのマッチングを図る | 自治体が制度を運営している地域の物件 |
寄付は、所有者が申し出るだけでは成立せず、自治体や法人が受け入れる必要があります。物件の用途や維持費などを踏まえて判断されるため、事前に受入条件を確認してください。
自治体や法人が必ず受け入れるとは限らないため、事前の確認が必要です。
賃貸として活用できれば、空き家を保有しながら家賃収入を得られる可能性があります。一方、建物の修繕や設備交換、入居者募集、日常管理に費用がかかる点には注意が必要です。
自治体によっては、空き家バンクによる売買・賃貸のマッチングや、改修・解体に関する補助制度を用意しています。利用できる制度は地域ごとに異なるため、空き家がある市区町村にも確認してみましょう。
相続放棄、売却、国庫帰属、寄付、賃貸のどれがよいかは、物件ごとに異なります。空き家の価値と今後かかる費用を並べて比較すると、自分の家庭に合う方法を検討しやすくなります。
相続の手続きを自分で進められるかどうかの判断は、下記の記事で詳しく解説しています。

空き家の相続放棄で迷ったらPR mediaへ無料相談

空き家を相続放棄すべきかは、維持費だけでは判断できません。物件の価値や売却の可能性、ほかの相続財産も含めて比較することが重要です。
- 「相続放棄をすれば管理義務から離れられるか分からない」
- 「売却価格より解体費用のほうが高くならないか不安」
- 「売却・買取・活用のうち、どの方法がよいか迷っている」
このような悩みがある方は、PR mediaへの無料相談をご活用ください。
当メディアの調査では、実家の今後に向けて「特に何もしていない」と答えた人は約79.3%です。一方、売却や活用について調べた人は約4.7%、不動産会社に査定・相談した人は約2.0%です。何から確認すべきか分からず、具体的な行動に移せていない人が多いことがうかがえます。(当メディア調査・2026年6月/回答300名)
PR mediaでは、特定の方法を先に決めるのではなく、空き家と相続財産の全体を確認した上で選択肢を整理します。
売却・活用・空き家買取だけでなく、不動産を売却した後も賃料を払って利用し続ける「リースバック」などを比較できる点が特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応サービス | 不動産の売却・活用・空き家買取・リースバック、生命保険などの選択肢の整理 |
| 相談できる内容 | 相続放棄とほかの方法の比較、管理・解体費用、不動産の扱いなど |
| 強み | 相続を入口に、不動産と生命保険を横断して比較できる |
| 向いている人 | 空き家を手放すか残すか迷っている方、何から始めるべきか分からない方 |
| 料金の目安 | 無料相談に対応 |
例えば、一定の売却価値がある空き家なら、相続して売却するほうが財産を残せる可能性があります。一方、売却が難しく、管理や解体の負担が大きい場合は、相続放棄も含めた検討が必要です。
また、生命保険を活用すれば、空き家の管理費や相続後の資金を準備できる可能性もあります。どの方法が適しているかは、物件の状態や家族構成によって異なります。
生命保険を使った相続対策については、下記の記事で詳しく解説しています。

ただし、相続放棄の可否や管理義務の判断は弁護士、相続登記は司法書士、税額計算や申告は税理士の領域です。PR mediaは、専門家に相談する前の状況整理や、空き家を手放す・活かす方向性を検討する窓口として活用できます。
空き家の扱いに迷っている段階で、現在の価値と今後かかる費用を整理しておきましょう。
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空き家の相続放棄に関するよくある質問

ここでは、空き家の相続放棄に関するよくある質問にお答えします。
参考:裁判所 特別縁故者に対する相続財産分与
まとめ:管理義務まで理解して、早めに相続放棄の判断を

空き家の相続放棄には、固定資産税や修繕費、借金などを引き継がずに済む利点があります。一方で、預貯金などの財産も受け取れず、ほかの親族に影響が及ぶ点には注意が必要です。
また、相続放棄は原則として相続の開始を知った時から3か月以内に行う手続きです。財産を処分すると放棄できなくなるおそれもあるため、遺品整理や売却などを進める前に財産全体を確認しましょう。
もし、空き家に一定の価値があれば、相続後の売却や買取、賃貸などが適しているケースもあります。PR mediaでは、不動産の売却・活用・空き家買取・リースバックや生命保険を横断して比較し、空き家を手放す方法・残す方法を一緒に検討できます。
相続放棄を決める前にPR mediaへの無料相談を活用し、それぞれのご家庭に合った選択肢を把握しておきましょう。
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