親御さんが持つ実家や土地について、相続を待たずに渡しておいたほうがよいのか判断に迷う方は少なくありません。
不動産は金額が大きく、関わる税金や手続きの種類も多いため、調べ始めた段階では全体像がつかみにくいテーマです。
- 不動産を生前贈与すると、どんなメリットとデメリットがあるのかが分からない
- 税金や費用が実際いくらかかるのかを知りたい
- わが家の不動産をどう進めればよいか、見当をつけられるようになりたい
不動産の生前贈与では、贈与税だけでなく登録免許税や不動産取得税といった費用も発生します。
相続であれば使えたはずの特例を失うケースもあり、税額の数字だけを見て動くと、かえって負担が増える可能性もあるため注意が必要です。
全体像を押さえたうえで検討すれば、ご家族の希望に沿った渡し方を落ち着いて選べます。
当メディアの調査では、親御さんの家(実家)が今売るとおおよそいくらになるかについて、「まったく知らない」が53.6%、「ほとんど知らない」が24.0%という結果でした。あわせて約8割の方が、金額の見当をつけられていません。判断の入口にあたる評価額の段階で、情報が足りていないご家庭が多いことが分かります(当メディア調査/2026年6月・親が持家の人300名)。
読み終えるころには、わが家の不動産を生前贈与すべきかどうか、そして誰に相談すればよいかが見えてきます。
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当メディア『タクソウ(託す相続)』は、PR media株式会社(東京都渋谷区/2018年設立)が運営しています。代表取締役の藤森 何意は、相続の総合的な知識を持つ「相続診断士」の資格を保有。PR mediaは保険代理事業を展開するとともに、不動産の売買・賃貸管理を手がける企業グループに属し、相続対策と関わりの深い不動産・保険分野の実務知見を有しています。
当サイトの記事は、国税庁:相続税・贈与税に関する情報、国税庁:統計情報(相続税の申告事績等)、裁判所:司法統計、法務省 等の公的データと、グループでの不動産・保険業務における実務経験に基づいて作成しています。個別の税務・法律のご判断については、税理士・司法書士等の専門家へのご相談をおすすめしています。
不動産の生前贈与とは?まず基本を知ろう

不動産の生前贈与は、税金と手続きが同時に絡む少し複雑なテーマです。
細かい税額の計算に入る前に、生前贈与とはそもそも何か、相続とはどこが違うのかという土台を、専門用語をかみ砕きながら整理していきます。
不動産の生前贈与とは(生きているうちに土地・建物を渡すこと)
不動産の生前贈与とは、財産を持つ方が生きているうちに、自分の意思で相手を決めて土地や建物を渡すことをいいます。
渡す側と受け取る側の双方が合意することで成立し、相続とは違って自分のタイミングで進められる点が特徴です。押さえておきたいポイントは次の4つです。
- 財産を受け取った人に贈与税がかかる場合がある(贈与税とは、個人から財産をもらったときにかかる税金のことです)
- 計算方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、贈与を受ける人が渡す人ごとに選べる
- 不動産では、登記簿の名義を書き換える手続き(所有権移転登記)が必要になる
- 法定相続人ではない孫や子の配偶者にも、財産を渡せる
4つのうち見落とされやすいのが、3つ目の登記簿の名義を書き換える手続きです。
口約束で「この家はお前に渡す」と決めていても、登記簿の名義が親御さんのままでは、自分の財産だと第三者に主張できません。
税金の話と手続きの話は切り離せないので、検討を始める段階で登記事項証明書を取り寄せ、現在の名義を確かめるのをおすすめします。
参考:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
参考:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
参考:法務局「法務局 不動産登記の申請書様式について」
生前贈与と相続の違い(不動産の場合)
同じ「不動産を渡す」でも、生前贈与と相続では税金の種類も手続きも変わります。不動産に絞って7つの観点で比べると、それぞれの性格がつかみやすくなります。
| 観点 | 生前贈与 | 相続 |
|---|---|---|
| 渡すタイミング | 存命のうちに、自分で決めた時期に渡せる | 相続が発生したときに引き継がれる |
| 渡す相手 | 孫や子の配偶者など、相手を自由に選べる | 法定相続人が基本(遺言による指定も可能) |
| かかる税金 | 贈与税(受け取った人が納める) | 相続税 |
| 控除の枠 | 年110万円(暦年課税・受け取る人ごと) | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
| 登録免許税 | 不動産の価額の2.0% | 不動産の価額の0.4% |
| 不動産取得税 | 課税の対象になる | 相続による取得は非課税 |
| 主な手続き | 贈与契約書の作成、所有権移転登記、贈与税の申告 | 遺産分割協議、相続登記、相続税の申告 |
比べて見えてくるのは、渡し方の自由度と費用の重さが引き換えの関係にあるという点です。
生前贈与は相手も時期も選べる代わりに、1年あたりの非課税枠は小さく、名義変更にかかる税金(登録免許税)は相続の5倍になります。
ご家庭でまず「誰に渡すかを重視したいのか」、それとも「費用をなるべく抑えたいのか」、どちらを優先するかをはっきりさせておきましょう。そうすることで、この先の判断で迷うことが少なくなります。
引用:国税庁 「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
引用:国税庁 「No.4152 相続税の計算」
引用:国税庁 「No.7191 登録免許税の税額表」
参考:総務省 「地方税制度|不動産取得税」
相続税を心配して、実家の名義を早めにお子さんへ移しておきたいと考える方もいます。しかし、相続税がかかるかどうかは財産の総額で決まり、基礎控除の範囲内に収まれば原則として申告も納税も必要ありません。
慌てて名義を移すと、本来不要だった登録免許税や不動産取得税の負担だけが残ることもあります。まずは預貯金・不動産・生命保険などを書き出して総額を把握し、そのうえで渡し方を検討するのが安心です。
不動産を生前贈与するメリット

不動産を生きているうちに渡すことには、4つのメリットがあります。相続を初めて調べる方にも伝わる形で整理します。
相続財産を減らして相続税を軽減できる可能性
生きているうちに不動産を渡しておけば、その分だけ相続時の財産が減るため、相続税の負担が軽くなるケースがあります。
相続税は財産の全額にかかるのではなく、基礎控除という非課税ラインを超えた部分にかかる仕組みです。法定相続人の数によって、この非課税ラインは次のように変わります。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
財産の合計がこの金額に収まるご家庭では、相続税の申告も納税も原則として不要です。裏を返せば、基礎控除を大きく超えそうなご家庭ほど、生前に財産を移す意味が生まれます。
不動産の評価額と預貯金を足した金額を、ご自身の基礎控除額と見比べるところから検討すると安心です。
なお暦年課税で渡した財産のうち、相続が近い時期の分は相続財産に戻して計算されます。戻す期間は2024年1月1日以後の贈与から段階的に延びており、相続が起きた時期によって次のように異なります。
| 相続が発生した時期 | 相続財産に戻す贈与の範囲 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内に受けた贈与 |
| 2027年1月1日から2030年12月31日まで | 2024年1月1日から相続開始日までに受けた贈与 |
| 2031年1月1日以後 | 相続開始前7年以内に受けた贈与 |
※2026年7月時点。延長された4年分については、合計100万円まで加算されません。
最終的には7年分がさかのぼって対象となるため、相続が近づいてからの贈与ほど効果は限られます。
相続税を意識して財産を移すのであれば、親御さんが元気なうちに、何年かけて渡すかという計画を立てておくことが結果の差につながります。
参考:国税庁「No.4152 相続税の計算」
引用:国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
生前贈与を使った相続税対策の全体像は、下記の記事で詳しく解説しています。

値上がりしそうな不動産や収益物件を早めに渡せる
不動産の生前贈与には、値上がりしそうな土地や収益物件を、価値が上がる前に渡せるという利点があります。押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 値上がりが見込まれる土地:相続時精算課税では贈与したときの価額で相続財産に加算されるため、その後の値上がり分は加算されずに済む
- アパートなどの収益物件:渡したあとの家賃収入は受け取った側のものになり、親御さんの財産がさらに増えるのを抑えられる
- 値下がりした場合:贈与したときの高い価額のまま加算されるため、反対に不利へ働くこともある
3つ目にあるとおり、この考え方は値上がりを前提にしています。将来の地価を確実に読むことは誰にもできないため、「上がりそうだから」という一つの理由で決めてしまうのは避けたいところです。
一方、収益物件は家賃収入という形で数字が見えます。直近の家賃収入と今後の修繕見込みを書き出したうえで、渡す価値があるかどうかを判断してみてください。
参考:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
参考:国税庁「No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)」
渡す相手・時期を自分で選べる(認知症対策にもなる)
相続では法定相続人が引き継ぐのが基本ですが、生前贈与なら渡す相手をご自身で決められます。時期を選べる点も、相続にはない特徴です。この自由度がもたらす利点を、4つ挙げてみます。
- 法定相続人ではない孫や、子の配偶者にも財産を渡せる
- 「この土地は長男に」というように、財産ごとに渡し先を決められる
- 判断能力があるうちに手続きを進められるので、不動産の売却や贈与をスムーズに行える
- 元気なうちに方針を決めておけば、ご家族が対応に困る場面を減らせる
これら4つの利点に共通するのは、どれも親御さんの判断能力がしっかりしているうちでなければ活かせないという点です。とはいえ、実家の今後について家族できちんと話し合えているご家庭ばかりではありません。
当メディアの調査では、実家の今後について「話したことはない」が52.0%、「なんとなく話題に出た程度」が34.3%でした。「具体的に話し合ったことがある」は13.6%にとどまり、話す機会がないまま時間だけが過ぎている様子が読み取れます(当メディア調査/2026年6月・親が持家の人300名)。
切り出しにくい話題ではありますが、帰省や家族が集まる機会に「この家をどうしたいか」を一度聞いておくだけでも、選べる手段の幅は変わってきます。
相続時の争いを防ぎやすい
不動産の生前贈与は、相続時の争いを防ぎやすくする手段になります。不動産は現金のように等分できないため、遺産分割で意見が割れやすい財産です。
誰に渡すかを生前に決めて名義まで移しておけば、その部分は相続人同士の話し合いから外れます。争いを防ぐ効果をより確かなものにする備えを、3つ挙げます。
- 贈与契約書を作成し、いつ誰に何を渡したかを書面で残しておく
- 贈与の事実をご家族に伝え、後から「聞いていない」が生まれないようにする
- ほかの相続人とのバランスを考え、必要に応じて遺言もあわせて検討する
3つに共通するのは、記録に残すことと家族で共有することです。生前贈与そのものは争いを減らす方向へ働きますが、内容が伝わっていないと、かえって不信を招くことがあります。
贈与を決めたら契約書を作成し、その内容をほかの相続人にも伝えておくことが大切です。一連の流れとして進めることで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
公平に分けたいという思いから、実家を兄弟の共有名義にする方法を考える方もいます。共有名義にすると、売却や大規模な修繕のたびに共有者全員の同意が必要です。
さらに次の世代へ相続が進むと共有者の人数が増え、話をまとめること自体が難しくなっていきます。分けにくい財産については、売却して現金で分ける方法も含めて検討することをおすすめします。
不動産を生前贈与するデメリット

生前贈与には利点がある一方で、場合によっては相続より負担が重くなる可能性もあります。ここでは4つのデメリットを、避けるためのヒントとあわせて確認していきます。
贈与税が相続税より高くなりやすい
同じ金額の財産を一度に渡す前提で比べると、贈与は控除の大きい相続よりも負担が重くなる傾向があります。理由は、贈与税と相続税で控除の設計が大きく異なるためです。
暦年課税の贈与税は、1年間に受け取った合計から110万円を引いた残りに、次の税率をかけて計算します。
| 110万円を引いた後の金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | − |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
金額が上がるほど税率が大幅に上昇するのが分かります。不動産は評価額が数千万円になることも多く、一度に渡すと高い区分に入りやすくなるため要注意です。
累計2,500万円まで贈与税がかからない相続時精算課税を選ぶ方法もあります。渡す前に税理士へ両方のパターンを試算してもらうと、判断材料がそろいます。
引用:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
参考:国税庁「No.4152 相続税の計算」
小規模宅地等の特例が使えなくなる場合がある
自宅の土地を生前に渡すと、相続なら使えたはずの大きな減額制度を失うことがあります。小規模宅地等の特例については、特に押さえておきたいポイントが3つあります。
- 一定の要件を満たす自宅の土地について、330平方メートルまでの部分の評価額を80%減額できる
- 対象になるのは相続や遺贈(遺言で財産を渡すこと)で取得した土地で、生前贈与で受け取った土地は含まれない
- 相続時精算課税を使って渡した自宅の土地も、この特例からは外れる
2つ目と3つ目が、不動産の生前贈与でつまずきやすい部分です。贈与税を抑えるつもりで相続時精算課税を選んだ結果、80%の減額を受けられなくなることがあります。
自宅の土地が財産の中心を占めるご家庭は、名義を動かす前に「相続で引き継いだ場合にこの特例を使えるか」を税理士に確認するのがおすすめです。
特別受益として相続人ともめることがある
特定の相続人にだけ不動産を渡すと、遺産分割の場面で「特別受益」として扱われることがあります。
特別受益とは、生前に受け取った財産を遺産の前渡しとみなす考え方です。知っておきたい取り扱いを4つ挙げます。
- 生活の元手として渡した財産などは、相続財産に戻して各人の取り分を計算する
- 戻して計算した結果、生前に受け取っていた相続人の取り分は減る形になる
- 財産を渡した方が、戻さなくてよいという意思を示していた場合は、その意思に従う
- 婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅の建物や敷地を贈与した場合は、戻さなくてよいという意思表示があったものと推定される
4つ目のとおり、配偶者へ自宅を渡すケースでは扱いが変わります。
一方でお子さんへの贈与は戻して計算する対象になり得るため、贈与契約書に加えて、戻さなくてよいという意思を遺言で残しておく方法が役立ちます。
分割の進め方そのものは弁護士の業務にあたるので、相続人の間で意見が分かれそうな場合は弁護士へご相談ください。
参考:e-Gov法令検索「民法第九百三条」
相続でもめやすい事例と防ぎ方は、下記の記事で詳しく解説しています。

いちど贈与すると簡単には戻せない
不動産の贈与は、名義を移してしまうと元に戻すのが容易ではありません。やり直そうとすると、あらためて費用と手続きが発生します。注意しておきたい点を3つ挙げます。
- 名義を戻す場合、再度の贈与や売買として扱われ、登録免許税や不動産取得税がかかる可能性がある
- 相続時精算課税をいったん選ぶと、同じ人からの贈与を暦年課税に戻せない
- 書面によらない贈与は、まだ実行していない部分について解除できる場合がある
3つ目のとおり、法律上は解除の余地が残る場面もあります。ただし登記まで済ませてしまうと、後戻りが難しくなります。
迷いが残っている段階では契約書の作成までにとどめ、家族の合意が固まってから登記へ進むという順番を守るのが無難です。
引用:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
引用:e-Gov法令検索「民法第五百五十条」
参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
デメリットの中でも影響が読みにくいのが、小規模宅地等の特例です。相続時精算課税を選んで自宅の土地を渡した後に、80%の減額を使えないと気づいても、名義を戻して取り返すことはできません。
制度を単体で判断するのではなく、自宅・預貯金・生命保険といった財産を一覧にしたうえで、組み合わせを考えていく進め方をおすすめします。
不動産の生前贈与でかかる税金・費用

不動産を生前に渡すと、贈与税のほかにもいくつかの税金と費用が発生します。何にいくらかかるのかを種類ごとに確認したうえで、最後にモデルケースで全体像をつかみます。
贈与税(暦年課税と相続時精算課税)
贈与税の計算方法には2種類があり、贈与を受ける人が渡す人ごとに選べます。非課税の枠も必要な手続きも大きく異なるため、5つの観点で比べてみましょう。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 非課税枠 | 年110万円 | 累計2,500万円+年110万円 |
| 使える人 | 制限なし | 渡す側は60歳以上の父母・祖父母、受け取る側は18歳以上の子・孫 |
| 手続き | 届出は不要(110万円を超えたときは贈与税の申告) | 「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要 |
| 相続時の扱い | 相続前の一定期間に受けた贈与を相続財産に加算 | 年110万円を超えた分を、贈与したときの価額で加算 |
| 注意点 | 加算する期間が最長7年へ段階的に延長される | 選択後は同じ人からの贈与を暦年課税に戻せない |
非課税枠の大きさだけを見ると相続時精算課税が有利に映りますが、いったん選ぶと後戻りできないため、慎重に検討して決めなければなりません。
不動産のようにまとまった金額を一度に渡す場面では、この制度が検討の対象になります。
届出書を提出し忘れると暦年課税が適用されます。どちらの制度を利用するか決めたら、届出や申告の手続きまであわせて確認しておくことが重要です。
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
引用:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
参考:国税庁「No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)」
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を取得したときに一度だけかかる都道府県の税金です。
計算は「固定資産税評価額×税率」で、固定資産税評価額とは市区町村が税の計算のために定めた公的な価格を指します。知っておきたいポイントを5つ挙げます。
- 税率:原則4%。土地と住宅は、2027年3月31日までの取得であれば3%
- 土地の計算:宅地などは、税率をかける前の価格を評価額の2分の1に圧縮する特例がある
- 住宅の控除:新築住宅は最高1,200万円を控除(中古住宅は新築時の控除額と同額)
- 免税点:取得した不動産の価格が一定額に満たないときは課税されない
- 取得の原因による違い:相続で取得した場合は非課税だが、贈与で取得した場合は課税の対象になる
※2026年7月時点。控除や特例には、床面積などの要件があります。
生前贈与を考えるうえで効いてくるのは、5つ目の違いです。
相続では生じない税金が、贈与では課税の対象になります。ただし免税点や住宅の控除といった仕組みもあり、条件によって金額は大きく動きます。
税額は都道府県が計算し、後日通知されます。事前におおよその税額を知りたい場合は、お住まいの都道府県のホームページで軽減措置の適用要件を確認しておくと安心です。
引用:総務省「地方税制度|不動産取得税」
引用:国土交通省「住宅:不動産取得税に係る特例措置」
登録免許税
名義変更の登記をするときにかかるのが登録免許税です。税率は登記の原因によって決まっており、贈与と相続でどれくらい違うのかを並べてみます。
| 登記の原因 | 税率 | 不動産の価額が2,000万円の場合 |
|---|---|---|
| 贈与による所有権移転 | 2.0%(1,000分の20) | 40万円 |
| 相続による所有権移転 | 0.4%(1,000分の4) | 8万円 |
同じ不動産を渡すのに、5倍の差が生まれる計算です。ここでいう不動産の価額は、原則として固定資産税評価額をもとに算出します。固定資産税の納税通知書には評価額が記載されています。
あらかじめ評価額に2.0%を掛けて登録免許税の目安を計算し、費用の見込みに含めておくと安心です。
引用:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
司法書士・税理士への依頼費用
税金のほかに、専門家へ支払う報酬も見込んでおく必要があります。誰にどこまで頼めるかは法律で定められているので、依頼先を考えるうえでのポイントを4つ挙げます。
- 登記の申請代理や書類作成:司法書士(弁護士も可)
- 贈与税の申告や税額の計算:税理士
- 報酬は事務所ごとに設定されており、金額には幅がある
- 登記事項証明書や固定資産評価証明書などの実費が別途かかる
登記と税務では依頼先が分かれるため、両方を同じ窓口で頼めるとは限らない点に注意が必要です。日本司法書士会連合会が公表している報酬アンケートを参考に、地域ごとの相場を確認しておくと安心です。
そのうえで、複数の司法書士事務所から見積もりを取り、作業範囲もあわせて比較するのが無難です。
参考:日本司法書士会連合会「司法書士の報酬と報酬アンケートについて」
税金・費用の計算イメージ(モデルケース)
ここまでの費用を1つの例にまとめてみます。固定資産税評価額が2,000万円(土地1,200万円・建物800万円)の実家を、親御さんからお子さんへ贈与する場合を想定しました。
| 費用の種類 | 概算 | 計算の考え方 |
|---|---|---|
| 贈与税(相続時精算課税を選んだ場合) | 0円 | 年110万円を引いた残りが、累計2,500万円の特別控除の範囲内 |
| 登録免許税 | 40万円 | 2,000万円×2.0% |
| 不動産取得税(土地) | 18万円 | 1,200万円×1/2×3% |
| 不動産取得税(建物) | 24万円 | 800万円×3% |
| 税金の合計 | 82万円 | 上記4項目の合算 |
| 司法書士への報酬など | 別途 | 事務所ごとに設定 |
※2026年7月時点の税率で計算した一例です。住宅の控除など各種要件は考慮していません。
贈与税がかからない前提でも、税金だけで82万円が必要になる計算です。
ただしこれは条件をそろえた一例にすぎません。建物が住宅の控除の要件を満たせば不動産取得税は下がりますし、持分を分けて渡す場合も金額は動きます。
このくらいの現金を期限までに準備できるか確認したうえで、名義変更を行う前に、税理士へご自身の状況に合わせた税額の試算を依頼することをおすすめします。
引用:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
引用:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
引用:総務省「地方税制度|不動産取得税」
引用:国土交通省「住宅:不動産取得税に係る特例措置」
費用の見積もりで抜けやすいのが、支払う時期のずれです。登録免許税は登記を申請するときに納めますが、不動産取得税は都道府県から納税通知書が届いてからの支払いになります。贈与税の申告と納税は、贈与を受けた年の翌年3月15日までです。
手元の資金計画を立てるときは、合計金額だけでなく支払う順番も一覧にしておくと、想定外の出費を避けやすくなります。
不動産の生前贈与で使える節税の特例

贈与税には、条件を満たすと負担を大きく減らせる特例が用意されています。ここでは不動産に関係の深い2つを取り上げますが、いずれも要件が細かいため、使えるかどうかの確認が前提になります。
住宅取得等資金の贈与の非課税
父母や祖父母から、住宅の新築や取得のための資金を受け取った場合に、一定額まで贈与税がかからなくなる制度です。
対象になるのはあくまで資金であり、不動産そのものの贈与は含まれません。制度の要点を6つに整理します。
- 対象期間:2024年1月1日から2026年12月31日までの贈与
- 非課税限度額:省エネ等住宅は1,000万円、それ以外の住宅は500万円
- 省エネ等住宅とは:断熱・耐震・バリアフリーのいずれかの性能が、一定の基準を満たす住宅
- 受け取る人の要件:贈与を受けた年の1月1日に18歳以上、その年の合計所得金額が2,000万円以下など
- 住宅の要件:登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下など
- 手続き:贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告
実家をそのまま渡したい方には使えない制度ですが、お子さんやお孫さんが住宅を購入する場面では効果が大きくなります。住宅の性能によっても非課税限度額は大きく異なります。
購入する物件が決まったら、カタログや性能証明書でどちらの区分に該当するかを確認しておくことが大切です。また、非課税限度額の範囲内であっても、申告が必要な点にも注意が必要です。
配偶者控除(おしどり贈与)で自宅を配偶者へ
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、自宅やその取得資金を贈与した場合に使える制度です。基礎控除の110万円とは別に、最高2,000万円まで控除を受けられます。使ううえで押さえたいポイントを4つ挙げます。
- 対象になるのは居住用の不動産、またはその取得のための金銭
- 基礎控除110万円とあわせて、最高2,110万円まで贈与税がかからない
- 同じ配偶者からは、一生に一度しか適用を受けられない
- 贈与税が0円になる場合でも、贈与税の申告は必要
非課税枠が大きいからといって、生前贈与が有利とは限りません。相続では「配偶者の税額軽減」が適用される場合があり、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税が非課税になります。
一方、生前贈与では登録免許税や不動産取得税がかかります。そのため、生前贈与を利用した場合と相続まで待った場合の負担を比較し、ご自身にとって有利な方法を選ぶことが大切です。
引用:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
参考:国税庁「No.4455 配偶者控除の対象となる居住用不動産の範囲」
引用:国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
特例は、要件を1つでも満たさないと適用を受けられません。適用の期限が定められているものもあり、時期を逃すと選択肢から外れてしまいます。
制度名だけを見て「うちも使えそうだ」と判断するのではなく、ご家庭の状況に当てはめて確認する作業が必要です。国税庁のサイトには要件が細かく掲載されているので、該当しそうなものに目を通しておくと、相談の場でも話が早く進みます。
不動産を生前贈与する手続きの流れ

実際に不動産を渡すときは、契約書の作成から名義変更、税金の申告へと進みます。工程ごとに必要な書類や期限が決まっているため、順を追って全体像を確認します。
STEP1 贈与契約書を作成する
贈与は口約束でも成立しますが、不動産では契約書を作成するのが基本です。登記の手続きでも税務の確認でも、根拠となる書面として働きます。記載しておきたい内容を5つ挙げます。
- 渡す人と受け取る人の氏名・住所
- 贈与する日と、受け取る側が承諾した旨
- 不動産の表示(所在・地番・土地の種類・面積など)
- 引き渡しと名義変更の時期
- 登記費用や税金をどちらが負担するか
5つのうち、書き間違いが起きやすいのが3つ目の不動産の表示です。普段使っている住所表記と登記上の地番は異なることが多く、思い込みで書くと訂正が生じます。
契約書を作成する前に、法務局で登記事項証明書を取得し、記載内容をそのまま転記しましょう。また、不動産に関する契約書には印紙税がかかる場合があるため、収入印紙が必要かどうかも事前に確認しておくことが大切です。
STEP2 名義変更(所有権移転登記)をする
契約書ができたら、不動産の所在地を管轄する法務局へ登記を申請します。申請にあたって押さえておきたいポイントを6つ挙げます。
- 申請先:不動産の所在地を管轄する法務局
- 登記の原因:「贈与」と記載する
- 申請する人:渡す側(登記義務者)と受け取る側(登記権利者)の共同申請が原則
- 登録免許税:不動産の価額の2.0%
- 申請書の様式:法務局のサイトで様式と記載例が公開されている
- 報酬を得て代理・書類作成ができる人:司法書士・弁護士に限られる
様式が公開されているため、ご自身で申請すること自体は可能です。ただし管轄の確認、添付書類の有効期限、登記識別情報(従来の権利証にあたるもの)の扱いなど、慣れないと戸惑う工程が続きます。
平日に法務局へ足を運ぶ時間がとりにくい方や、複数の不動産をまとめて動かす方は、司法書士へ依頼する前提で見積もりを取っておくとスムーズに進みます。
参考:法務局「不動産登記の申請書様式について」
参考:法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」
引用:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
専門家への依頼を検討している方は、下記の記事もあわせてご覧ください。

STEP3 贈与税を申告・納税する
不動産を受け取った側は、翌年に贈与税の申告と納税を行います。期限が決まっているので、押さえておきたい点を4つ挙げます。
- 申告と納税の期間:贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
- 申告先:財産を受け取った人の住所地を所轄する税務署
- 相続時精算課税を使う場合:同じ期間に「相続時精算課税選択届出書」を申告書に添えて提出
- 申告が不要な場合:その年に受け取った合計が110万円以下のとき
3つ目の届出書は、提出を忘れると暦年課税で計算されてしまいます。不動産のようにまとまった金額を渡す場面では、税額に大きな差が出る部分です。
期限を過ぎると原則として手続きのやり直しはできません。贈与を行った年のうちに、翌年2月から3月の申告期間を見据えて準備しておくと、期限に慌てず対応できます。
引用:国税庁「No.4429 贈与税の申告と納税」
参考:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
手続きに必要な書類
登記と申告では、必要になる書類が異なります。どの手続きで何が要るのかを並べて確認しておきましょう。
| 手続き | 主な書類 | 取得先 |
|---|---|---|
| 名義変更(登記) | 登記識別情報または権利証、印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書、登記事項証明書、贈与契約書 | 市区町村役場、法務局 |
| 贈与税の申告 | 贈与税の申告書、贈与契約書の写し、不動産の評価が分かる資料 | 税務署 |
| 相続時精算課税を選ぶ場合 | 相続時精算課税選択届出書、受け取る人の戸籍の謄本など | 市区町村役場、税務署 |
※2026年7月時点。実際に必要な書類は、登記の内容によって変わります。
取得先が市区町村役場と法務局に分かれているため、同じ日にまとめて集めにくい点が負担になります。
印鑑証明書には有効期限があるため、登記の申請日に間に合うよう、取得する順番をあらかじめ計画しておくことをおすすめします。
また、申請書の様式や必要書類は変更される場合があるため、手続きを始める前に法務局と国税庁のホームページで最新情報を確認しておきましょう。
参考:法務局「不動産登記の申請書様式について」
参考:国税庁「No.4429 贈与税の申告と納税」
手続きで戸惑いやすいのが、登記と申告の窓口が別々である点です。名義変更は法務局、贈与税の申告は税務署と、提出先も期限も違います。
登記が終わった時点で手続きが完了したと思い込み、翌年の申告を失念してしまう可能性もあるため要注意です。贈与を実行した日をカレンダーに残しておき、翌年の申告時期に確認する習慣をつけておくと取りこぼしを防げます。
不動産の生前贈与で迷ったらPR mediaへ無料相談

わが家の不動産をどう渡すべきか、税金や手続きの不安を誰に相談すればよいか。判断材料が足りないまま立ち止まってしまう方に向けて、PR mediaでは無料の個別相談をご用意しています。
PR mediaでは、不動産と生命保険の両面から、ご家庭に合う渡し方を一緒に整理しています。相談できる内容と対応の範囲は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相談できること | 相続全体の整理、不動産の評価・活用・売却・リースバック、生命保険を使った納税資金の準備、生前贈与を含めた渡し方の検討 |
| 強み | グループとして不動産と生命保険を横断し、渡し方をまとめて検討できる |
| 相談料 | 無料 |
| 対応エリア | 全国 |
不動産の生前贈与は、税金・費用・手続き・特例が複雑に絡み合うテーマです。PR mediaでは特定の手法をおすすめするのではなく、ご家庭の財産に合う選び方を一緒に整理する形で相談を受け付けています。
個別の税額計算は税理士、登記の手続きは司法書士の業務にあたるため、必要に応じて専門家と連携しながら進めます。
当メディアの調査では、実家の今後に向けて実際に行ったことについて、「特に何もしていない」が79.3%という結果でした。「不動産会社に査定・相談をした」は2.0%、「税理士・FPなど専門家に相談した」は3.6%にとどまり、まだ動けていないご家庭が大半を占めている状況です。(当メディア調査/2026年6月・親が持家の人300名)
早い段階で情報を整理しておけば、選べる手段の幅を保ちやすくなります。
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相談の前に用意しておくと話が早く進むのが、財産のおおまかな内訳です。「実家の所在地」「固定資産税の納税通知書」「預貯金のおおよその残高」「加入している生命保険」の4点をメモしておくだけで、その場で確認できる範囲が変わってきます。
金額が正確でなくても差し支えありません。分かる範囲で書き出しておくことが、話を前に進める材料になります。
不動産の生前贈与に関するよくある質問

最後に、不動産の生前贈与について寄せられることの多い疑問へ、簡潔にお答えします。
まとめ:不動産の生前贈与は税金・費用と手続きを理解して選ぶ

不動産の生前贈与が有利になるかどうかは、ご家庭の状況によって入れ替わります。記事の要点を4つに絞って振り返ります。
- 渡す相手や時期を選べる、値上がりしそうな資産や収益物件を早めに渡せるという利点がある
- 贈与税に加えて登録免許税が2.0%、不動産取得税もかかり、相続よりコストは重くなりやすい
- 自宅の土地は、生前贈与で渡すと小規模宅地等の特例を使えなくなる
- 有利かどうかは、不動産の種類・評価額・家族構成によって変わる
4つを踏まえると、税額の比較だけで決めてしまうのは避けたほうがよいと分かります。ご家庭の財産の内訳と、渡したい相手や目的を並べたうえで選ぶことが大切です。
判断に迷う部分が出てきたら、PR mediaの無料相談でわが家の状況を整理してみてください。
なお、本記事の税制に関する情報は2026年7月時点のものです。制度は改正されることがありますので、実際に判断される際は最新の情報をご確認ください。
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