生前贈与と相続はどちらが得?損しない選び方をケース別に解説

生前贈与と相続はどちらが得かを専門家がわかりやすく解説するアイキャッチ画像

親から財産を受け取る方法には生前贈与と相続の2つがあります。では、どちらが有利なのでしょうか。

調べ始めたばかりの方にとっては、そもそも何を基準に判断すればよいのかが分からず、手がかりのないところからのスタートになりがちです。

こんな疑問をお持ちではありませんか。

こんな悩みはありませんか
  • 生前贈与と相続では、そもそも何が違うのかが分からない
  • 贈与税と相続税では、どちらの負担が重いのかを知りたい
  • わが家の場合はどちらを選べばよいのか、見当をつけられるようになりたい

生前贈与と相続のどちらが得かは、財産の額・種類・目的によって変わります。税額の数字だけで決めてしまうと、登記にかかる費用や使えるはずだった特例を見落とし、結果として負担が増えることもあるため要注意です。

違いを理解したうえで選べば、ご家族の希望に沿った資産の渡し方を落ち着いて検討できます。

当メディアの調査では、相続税の基礎控除について「言葉自体を知らない」が約22%、「言葉は聞いたことがあるが、内容は分からない」が約60%でした。合わせて8割を超える方が、内容まで正確に把握できていません。判断の土台となる部分から分かりにくいのが、相続というテーマの難しさなのかもしれません(出典:当メディア調査/2026年6月・親がご存命の人300名)。

読み終えるころには、わが家が生前贈与と相続のどちらに向いていそうか、そして誰に相談すればよいかが見えてきます。

運営者情報

当メディア『タクソウ(託す相続)』は、PR media株式会社(東京都渋谷区/2018年設立)が運営しています。代表取締役の藤森 何意は、相続の総合的な知識を持つ「相続診断士」の資格を保有。PR mediaは保険代理事業を展開するとともに、不動産の売買・賃貸管理を手がける企業グループに属し、相続対策と関わりの深い不動産・保険分野の実務知見を有しています。

当サイトの記事は、国税庁:相続税・贈与税に関する情報国税庁:統計情報(相続税の申告事績等)裁判所:司法統計法務省 等の公的データと、グループでの不動産・保険業務における実務経験に基づいて作成しています。個別の税務・法律のご判断については、税理士・司法書士等の専門家へのご相談をおすすめしています。

相続の悩み、まずは無料で全体像を整理

アンケート回答+本人確認で
アマギフ・PayPay 300円分プレゼント!!

目次

【結論】生前贈与と相続、どちらが得かはケースで決まる

生前贈与と相続のどちらが得かは金額・種類・目的の3条件で決まることを示す見出し画像

生前贈与と相続は、「こちらが必ずお得」と決められるものではありません。財産の「金額」「種類」「目的」の3条件によって、どちらが有利かは変わるからです。早見表で全体像をつかんでみましょう。

生前贈与と相続の総合比較(早見表)

両者は、課される税だけでなく資産の渡し方や手続きも異なります。7つの観点で並べると、それぞれの性格がつかみやすくなります。

スクロールできます
観点生前贈与相続
渡すタイミング存命のうちに、自分で決めた時期に渡せる相続が発生したときに引き継がれる
渡す相手孫や子の配偶者など、相手を自由に選べる法定相続人が基本(遺言による指定も可能)
かかる税金贈与税(受け取った人が納める)相続税
控除の枠年110万円(暦年課税・受け取る人ごと)3,000万円+600万円×法定相続人の数
主な特例相続時精算課税、住宅取得等資金など小規模宅地等の特例、配偶者の税額の軽減、生命保険金の非課税枠など
主な手続き贈与契約書の作成、贈与税の申告(110万円超のとき)遺産分割協議、相続税の申告(基礎控除超のとき)
向きやすい人渡す相手や時期を自分で決めたい方財産が基礎控除に収まりそうな方

表から読み取れるのは、控除の大きさと自由度が反対の関係にある点です。

生前贈与は渡す相手や時期を選べる代わりに、1年あたりの非課税枠は110万円にとどまります。

一方の相続は渡し方の自由度こそ低いものの、3,000万円+600万円×法定相続人の数という大きな基礎控除があります。基礎控除とは、一定額まで税金がかからないという非課税ラインのことです。

この両者の性質の違いこそが、「どちらが得か」を左右する重要な要素です。最初に両者の違いを理解することで、以降の内容がぐっと理解しやすくなります。

💡 専門家からの補足

ご相談でよくあるのが、毎年110万円ずつ贈与しておけば安心であると考えて、手続きを進めてしまうケースです。ですが、同じ金額を毎年贈与し続けると、定期贈与とみなされ110万円以内でも贈与税がかかる可能性があります。資産の全体像を踏まえ、生前贈与と相続のどちらが節税になるか、慎重に判断することが大切です。

参考:知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】|政府広報オンライン

生前贈与と相続の基本|そもそも何が違う?

生前贈与と相続の基本的な仕組みの違いを示す見出し画像

比較の前に、それぞれがどのような仕組みなのかを整理します。税額や特例には後で詳しく触れるので、ここでは渡すタイミング・相手・手続きについて整理してください。

生前贈与とは(生きているうちに財産を渡す)

生前贈与は、財産を持つ方が生きているうちに、自分の意思で相手を決めて財産を渡す方法です。渡す側と受け取る側、双方の合意で成立します。

生前贈与の基本ポイント
  • 財産を受け取った人に、贈与税がかかる場合がある
  • 課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類がある
  • 課税方法は、贈与を受ける人が贈与者ごとに選べる
  • 相続人ではない孫や子の配偶者にも渡せる

2種類の課税方法は、非課税枠も手続きも大きく異なります。違いを並べてみましょう。

スクロールできます
項目暦年課税相続時精算課税
非課税枠年110万円累計2,500万円+年110万円
使える人制限なし渡す側は60歳以上の父母・祖父母、受け取る側は18歳以上の子・
手続き届出は不要(110万円を超えたときは贈与税の申告)「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要
相続時の扱い加算対象期間内の贈与を相続財産に加算年110万円を超えた分を贈与時の価額で加算
注意点加算対象期間が最長7年へ延長された選択後は同じ人からの贈与を暦年課税に戻せない

暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計から110万円を差し引いて計算します。合計が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要です。

相続時精算課税は、届出をしたうえで累計2,500万円までの特別控除と年110万円の基礎控除を使える仕組みになっています。まとまった財産を早く渡したいときに向きますが、一度選ぶと同じ人からの贈与を暦年課税に戻せない点に注意が必要です。

どちらを選ぶかで結果が大きく変わるため、「なんとなく」で決めず、財産全体を見て判断するのがおすすめです。

参考:財産をもらったとき|国税庁

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

生前贈与を使った相続税対策については下記の記事にて詳しく解説しています。

合わせて読みたい

相続とは(亡くなったときに財産を引き継ぐ)

相続は、相続が発生したときに、その方の財産を法定相続人などが引き継ぐ仕組みです。誰が引き継ぐかは民法で定められています

相続人になる人(法定相続人の範囲)
  • 配偶者は、常に相続人になる
  • 第1順位:子(子がすでに亡くなっている場合は孫など)
  • 第2順位:父母(父母がいないときは祖父母)。※第1順位の人がいない場合に相続人になる
  • 第3順位:兄弟姉妹(すでに亡くなっている場合はその子)。※第1・第2順位の人がいない場合に相続人になる

引き継いだ財産の合計が基礎控除を超えるときに、相続税の申告と納税が必要になります。基礎控除に収まるなら、申告も納税も原則として不要です。

参考:財産を相続したとき|国税庁

生前贈与と相続の主な違い(渡すタイミング・相手・手続き)

渡すタイミングと相手の違いは、そのまま手続きの違いにつながります。誰が動き、いつまでに何をするのかを比較しました。

スクロールできます
観点生前贈与相続
分け方を決める人渡す側と受け取る側の合意遺言、または相続人全員の話し合い
税金を納める人財産を受け取った人財産を取得した相続人など
申告・納税の期限贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内
申告が必要になる目安受け取った財産の合計が110万円を超えたときなど財産の合計が基礎控除を超えたとき

大きな違いは、準備にかけられる時間です。生前贈与は当事者2人の合意で進められますが、相続は遺言がなければ相続人全員での話し合いが必要になります。

しかも、10か月以内に「財産の把握から分け方の決定・納税」までを終えなければなりません。

💡 専門家からの補足

「現金を少しずつ渡していたつもりが、通帳も印鑑も親御さんが管理したままだった」というご相談があります。この状態だと贈与が成立していないと判断され、親御さんの財産として扱われる可能性があります。贈与契約書を残し、受け取る側の口座で管理する形にしておくと、後の確認がスムーズです。

参考:No.4429 贈与税の申告と納税|国税庁

参考:相続税の申告のしかた(令和8年分用)|国税庁

税額で比べるとどちらが安い?

贈与税と相続税を税額で比べるとどちらが安いかを示す見出し画像

税額だけで比べると、まとまった財産を一度に渡す場合は相続税のほうが安くなりやすい傾向があります。控除の大きさと税率の上がり方という2つの角度から確認していきましょう。

相続税は基礎控除が大きく、少額なら課税されないことも

相続税には基礎控除があり、実際に相続税の対象となる遺産の全額がその範囲に収まれば税金はかかりません。計算式は次のとおりです。

相続税の基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人の数ごとの基礎控除額は、次のようになります。

法定相続人の数ごとの基礎控除額
  • 1人 → 3,600万円
  • 2人 → 4,200万円
  • 3人 → 4,800万円
  • 4人 → 5,400万円

たとえば法定相続人が3人なら、基礎控除は4,800万円。財産の合計がこの金額に収まるご家庭では、相続税の申告も納税も原則として不要です。

なお相続税は、財産の額にそのまま税率を掛けるわけではありません。いったん法定相続分で分けたと仮定した金額に税率を掛けて総額を求める、少し複雑な仕組みです。

土地や建物の評価額も現金とは決まり方が違うため、正確な判定は専門家に確認するのが安心です。

参考:相続税のあらまし|国税庁

贈与税は年110万円を超えると税率が高くなる

暦年課税の贈与税は、1年間に受け取った財産の合計から110万円を引いた残りに税率を掛けて計算します。金額が大きくなるほど、税率は段階的に上がります

スクロールできます
基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

この表は、18歳以上の方が父母・祖父母から受け取る贈与に使う「特例税率」です。それ以外の贈与には「一般税率」が使われ、同じ金額でも税率が高くなる場合があります。

ここで注目したいのは、相続税の基礎控除が「財産全体に一度だけ」働くのに対し、贈与税の110万円は「毎年使える代わりに枠が小さい」という違いです。まとまった財産を一度に贈与すると税率が高くなりやすいのは、この設計によるもの。大きな財産を一気に渡すなら、税率の上がり方に注意しましょう。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

同じ財産額なら相続税のほうが安いことが多い

同じ額の財産を一度に渡す前提で比べると、控除の大きい相続のほうが負担は軽くなります。たとえば「1,000万円を子1人に渡す」場合を見てみましょう。

1,000万円を子1人に渡す場合の税額比較(一例)
  • 生前贈与(暦年課税・特例税率で一度に1,000万円) → 贈与税 177万円 (計算:(1,000万円 − 110万円) × 30% − 90万円 = 177万円)
  • 相続(財産の合計が基礎控除の範囲内) → 相続税 0円

このように、同じ1,000万円でも渡し方で大きく差が出ます。ただし、これはあくまで一例です。財産の種類や評価額、法定相続人の数、使える特例によって結果は変わります。

財産の総額が基礎控除を大きく超えるご家庭では、贈与税を負担してでも生前に移したほうが、トータルで安くなる場合もあります

個別の税額計算は税理士の業務にあたるため、ご自身のケースは専門家に相談してください。

💡 専門家からの補足

税額の比較で見落とされやすいのが、納税資金の準備です。財産の大半が実家などの不動産で現金が少ないご家庭では、相続税がかかると分かっても、支払うお金が手元にないことがあります。税額の大小だけでなく、「相続税を現金で払えるか」も判断基準の一つになります。

結局どちらが得?ケース別の選び方

生前贈与が得なケースと相続が得なケースの選び方を示す見出し画像

ここからは、ご自身の状況に当てはめる段階です。生前贈与が向きやすいケースと相続が向きやすいケースを比較しながら、判断の軸を整理していきます。

生前贈与が得になりやすいケース

生前贈与が力を発揮しやすいのは、次のような場合です。

生前贈与が得になりやすい4つのケース
  • 値上がりが見込まれる資産がある 相続時精算課税では「贈与時の価額」で相続財産に加算されるため、その後の値上がり分は加算されずに済む
  • 収益物件(アパートなど)を持っている 早く渡せば、その後の家賃収入は受け取った側のものになり、親の財産がさらに増えるのを抑えられる
  • 判断能力の低下に備えたい 認知症などで資産が凍結すると、売却も対策も難しくなる。元気なうちに動かしておける
  • 渡したい相手が多い 暦年課税の110万円は「受け取る人ごと」に使えるため、人数が多いほど非課税で移せる総額が大きくなる

4つに共通するのは、時間を味方につけられることです。相続人ではない孫や子の配偶者に確実に渡したい場合も、生前贈与が選択肢になります。

ただし、いずれも条件がそろって初めて有利に働くため、常に得になるわけではありません。「わが家に当てはまる項目はあるか」を確認するところから始めてみてください。

相続のほうが得になりやすいケース

反対に、相続で引き継ぐほうが向きやすいのは次のような場合です。特例を使えるかどうかが、結論を大きく左右します

相続のほうが得になりやすい4つのケース
  • 財産の総額が基礎控除以下 相続税がかからない見込みなら、贈与税を払ってまで急ぐ理由が乏しい
  • 自宅の土地に「小規模宅地等の特例」が使える 一定の要件を満たせば、330㎡までの部分の評価額を80%も減額できる
  • 生命保険の非課税枠を活かしたい 相続人が受け取る保険金は「500万円×法定相続人の数」まで非課税。受取人も指定できる
  • 財産の大部分が自宅で、現金が少ない 分けにくい財産を無理に生前に動かすと、手続きと費用の負担が増えやすい

特に気をつけたいのが、小規模宅地等の特例は相続で引き継いだ場合にしか使えないことです。国税庁も、相続時精算課税を使って贈与で取得した宅地は、この特例の対象にならないとしています。

評価額が80%も下がる効果は大きく、この特例のおかげで基礎控除内に収まり、相続税がかからなくなるご家庭も少なくありません

自宅が財産の中心なら、安易に生前贈与へ動かす前に、この特例が使えるかを必ず確認しましょう。

生命保険金の非課税枠も、相続だからこそ使える仕組みです。ただし、相続人以外の方が受取人だと適用されない点に注意してください。なお、生命保険は受取人を指定できるので、「この人に渡したい」を実現する手段としても役立ちます。

わが家はどっち?判断のポイント

判断の軸は3つに絞れます。財産の額・種類・目的の順に書き出すと、方向性が見えてきます。

わが家はどっち?判断の3つの軸
  • ① 財産の額:基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えそうか → 超えない見込みなら、相続を軸に検討しやすい
  • ② 財産の種類:現金・自宅・収益物件・生命保険の内訳を確認する → 自宅が中心なら特例、収益物件があるなら生前贈与が検討対象になる
  • ③ 目的:節税か、納税資金の確保か、渡したい相手への確実な承継か → 目的によって、優先すべき手段が変わる

このうち多くの方がつまずくのが、①の「財産の額」です。不動産の評価額が分からなければ、基礎控除を超えるかどうかも判定できません

当メディアの調査でも、「わが家で将来、相続税がかかると思うか」という質問に対し、「わからない」が35.3%で最多でした。「相続税について分かりにくい・相談したいこと」を尋ねた質問でも、「基礎控除など税額の計算方法」が34.3%で最多です(出典:当メディア調査/2026年6月・親がご存命の人300名)。

軸そのものは理解できても、わが家の数字に当てはめる段階で止まってしまう方が多いことがうかがえます。

財産の内訳を書き出す作業は、ご家族だけでも可能です。手が止まったところから専門家に見てもらうと、確認できる範囲が一気に広がります。

💡 専門家からの補足

ご相談で意外に多いのが、実家の価値を「購入時の価格」で考えているケースです。相続税で使う土地の評価額は、原則として路線価などをもとに算出するため、売買価格や購入額とは異なります。国税庁の路線価図・評価倍率表は誰でも閲覧できるので、確認の起点として活用してみてください。

生前贈与と相続で使える節税の特例

生前贈与と相続それぞれで使える節税の特例を示す見出し画像

どちらが得かは、特例を使えるかどうかで結論が変わります。ここでは代表的な制度の概要をつかんでください。

相続で使える特例(小規模宅地等の特例など)

相続側の代表格は小規模宅地等の特例です。あわせて押さえておきたい制度を3つ並べます。

相続で使える主な特例
  • 小規模宅地等の特例 一定の要件を満たす自宅の土地について、330㎡までの部分の評価額を80%減額できる
  • 配偶者の税額軽減 配偶者が取得した正味の遺産のうち、「1億6,000万円」か「法定相続分相当額」のいずれか多い金額まで相続税がかからない(適用には相続税の申告が必要)
  • 生命保険金の非課税枠 相続人が受け取った保険金について、500万円×法定相続人の数まで非課税になる

小規模宅地等の特例は、評価額そのものを大きく下げる制度です。自宅の土地が財産の中心を占めるご家庭では、適用できるかどうかで結論が変わります。

一方、配偶者の税額軽減は金額の大きな制度ですが、頼りすぎると次の相続で負担が増えることがあります。

配偶者が引き継いだ財産は、その後の相続で子どもへ移る際、法定相続人が1人減った状態で基礎控除や保険金の非課税枠を計算することになるためです。

ここで、相続が2回起きるケースを考えてみましょう。

たとえば父親が亡くなり、母親と子どもが財産を引き継ぐのが1回目の相続です。その後、母親が亡くなって残った財産が子どもへ移るのが2回目の相続にあたります。1回目で配偶者の税額軽減を使えば母親の税金は軽くできますが、そのぶん母親の手元に財産が多く残り、2回目で子どもの負担が増えることがあるのです。

具体的に見てみましょう。父親の遺産1億6,000万円について、母親が全額を引き継ぐパターンAと、法定相続分どおり母50%・子50%で分けるパターンBで、2回の相続を合わせた税額を比べました。

スクロールできます
項目パターンA:母親が全額引き継ぐ(目先の無税を優先)パターンB:法定相続分どおりに分ける(母50%・子50%)
【1回目の相続】 財産1億6,000万円(相続人3人)1億6,000万円(相続人3人)
基礎控除額4,800万円4,800万円
母親の取得額1億6,000万円(100%)8,000万円(50%)
子ども2人の取得額0円8,000万円(2人合計)
1回目の税額合計0円(配偶者の税額軽減をフル活用)860万円(母は0円、子2人で860万円)
【2回目の相続】 財産1億6,000万円(相続人2人・減)8,000万円(相続人2人・減)
基礎控除額4,200万円(1人減で縮小)4,200万円(1人減で縮小)
2回目の税額合計2,140万円(子どもが負担)470万円(子どもが負担)
【合計】2回分を合わせた税額2,140万円1,330万円

表を見ると、目先の無税を優先したパターンAのほうが、2回分を合わせると810万円も高くなっています。父親が亡くなった後、比較的短い期間で母親も亡くなると、子の税負担が重くなりやすいのです。

つまり、1回目の相続だけを見て、母親が全額引継げば非課税だから安心と決めてしまうのは危険です。2回目の相続まで見据えて分け方を考えることが、家族全体の負担を抑えるカギになります。

ただしこれも一例で、条件によって結果は変わるため、具体的な試算は専門家に相談してください。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

参考:No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁

参考:No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|国税庁

生命保険を使った相続税対策については下記の記事にて詳しく解説しています。

合わせて読みたい

生前贈与で使える特例(相続時精算課税・住宅取得資金)

生前贈与側にも、目的に応じた制度が用意されています。代表的な2つの概要です。

生前贈与で使える主な特例
  • 相続時精算課税 累計2,500万円までの特別控除と、年110万円の基礎控除を使える。渡す側は60歳以上の父母・祖父母、受け取る側は18歳以上の子・孫が対象
  • 住宅取得等資金の贈与の非課税 父母・祖父母から住宅の新築・取得などの資金を受け取る場合の非課税制度

「相続時精算課税」は、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から年110万円の基礎控除が設けられ、この枠内の贈与は相続財産に加算されなくなりました

使いやすくなった一方で、選択後は同じ人からの贈与を暦年課税に戻せない点は従来どおりです。

また、自宅の土地をこの制度で渡すと、小規模宅地等の特例が使えなくなる点にも注意してください。

「住宅取得等資金」の制度は、金額の上限や適用期限、資金の使い道が細かく定められています。使えるかどうかは条件次第なので、事前の確認が欠かせません。

💡 専門家からの補足

特例は「使えるはずだった」と後から気づいても取り返しがつきません。相続時精算課税を選んだあとに自宅の土地を渡していたことが分かり、小規模宅地等の特例を使えなくなる事例もあります。制度を単体で判断せず、財産全体を並べたうえで組み合わせを考えることが欠かせません。

参考:参考 相続時精算課税制度のあらまし|国税庁

参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

生前贈与を選ぶときの注意点

生前贈与を選ぶときの税制改正と費用の注意点を示す見出し画像

生前贈与を選ぶ場合、思いもよらず損をしてしまうことがあります。どちらが得かに直結する2点、税制改正で変わったルールと不動産ならではの費用を確認しておきましょう。

2024年の税制改正で暦年贈与のルールが変わった

2024年(令和6年)1月1日以後の暦年課税の贈与から、相続財産に加算される期間が最長7年へ延長されました。段階的に移行するため、相続が発生した日によって期間が変わります。

相続が発生した日ごとの加算対象期間
  • 2026年12月31日以前に相続が発生 → 相続開始前3年以内
  • 2027年1月1日〜2030年12月31日に発生 → 2024年1月1日から相続開始日まで
  • 2031年1月1日以後に発生 → 相続開始前7年以内

この改正で押さえておきたいのは、次の4点です。

改正で押さえておきたい4つのポイント
  • 相続開始日が2027年1月2日以後の場合、延長された期間(3年より前の部分)の贈与については、合計から総額100万円までは加算されない
  • この100万円は「毎年」ではなく、延長された期間の合計に対する枠
  • 110万円以下で贈与税がかからなかった贈与も、加算対象期間内であれば加算される
  • 相続が発生した年に受けた贈与も、加算の対象になる

要するに、相続が近い時期の贈与は、その多くが相続財産に戻される計算になります。暦年贈与で財産を移す効果を得るには、これまで以上に早い時期から計画的に進めることが大切です。

参考:令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし|国税庁

不動産の生前贈与は費用に注意

不動産そのものを生前に渡す場合、贈与税以外の費用が相続より重くなることがあります。代表的な2つの税金を比べます。

スクロールできます
費用生前贈与相続
登録免許税(所有権移転登記)不動産の価額の2.0%(1,000分の20)不動産の価額の0.4%(1,000分の4)
不動産取得税課税(税率4%。土地と住宅は軽減税率3%)相続による取得は非課税

たとえば不動産の価額が2,000万円の場合、登録免許税は生前贈与で40万円、相続で8万円と、5倍もの差になります。さらに生前贈与では不動産取得税もかかります。

税額だけを見て生前贈与が有利に見えても、費用まで含めると評価が変わることがあるのです。不動産を生前に渡すか迷ったら、贈与税だけでなく、これらの費用も合わせて見積もっておきましょう。実際の金額は価格や軽減措置の要件で変わるため、事前の確認をおすすめします。

💡 専門家からの補足

生前贈与では、財産を渡した翌年の2月1日〜3月15日に贈与税の申告・納税が必要です(110万円超の場合など)。不動産の場合は、これに加えて登記の手続きも発生します。期日と費用をあわせて見積もっておくと、想定外の出費や二度手間を避けやすくなります。

参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

参考:不動産取得税|総務省

生前贈与と相続で迷ったらPR mediaへ無料相談

生前贈与と相続で迷ったらPR mediaへ無料相談できることを示す見出し画像

どちらが得かを一般論だけで決めきるのは難しく、不動産があると計算はさらに複雑になります。PR mediaでは、わが家に合う渡し方を一緒に整理する無料相談を用意しています。

PR mediaの無料相談でできること
  • 相談できること:相続全体の整理、不動産の活用、生命保険を使った納税資金の準備、生前贈与を含めた渡し方の検討
  • 強み:グループとして不動産と生命保険の両面を扱い、渡し方を横断的に検討できる
  • 相談料:無料
  • 対応エリア:全国

相続の対策は、節税だけが目的ではありません。納税資金の確保と、家族がもめない形での承継も大切な目的です。PR mediaでは特定の手法を勧めるのではなく、ご家庭の財産に合う選び方を一緒に整理する形で相談を受け付けています。

個別の税額計算や税務上の最終判断は税理士の業務にあたるため、必要に応じて専門家と連携します。

💡 専門家からの補足

相談前に用意しておくと話が早いのが、財産のおおまかな内訳です。「預貯金の残高」「実家の所在地」「加入している保険」「収益物件の有無」──この4点をメモしておくだけで、その場で確認できる範囲が大きく変わります。金額が正確でなくても構いません。

相続の悩み、まずは無料で全体像を整理

アンケート回答+本人確認で
アマギフ・PayPay 300円分プレゼント!!

生前贈与と相続に関するよくある質問

生前贈与と相続のどちらが得かに関するよくある質問を示す見出し画像

最後に、生前贈与と相続のどちらが得かに関して寄せられる疑問に、簡潔にお答えします。

生前贈与と相続、結局どちらが節税になりますか?

財産の額・種類・目的によって変わるため、一概には言えません。同じ額を一度に渡すなら、基礎控除が大きいぶん相続のほうが負担は軽くなりやすいとされています。一方で、値上がりが見込まれる資産や収益物件は、早めに渡したほうが有利になることもあります。判断には財産の評価が欠かせないので、税理士など専門家に相談するのが無難です。。

財産が基礎控除以下なら相続でよいですか?

基礎控除以下という見込みであれば、相続を軸に考えて差し支えないケースが多いです。基礎控除の範囲なら相続税はかからず、申告も原則不要です。ただし、判定に含める財産は預貯金だけではありません。土地・建物(評価額は路線価などをもとに算出)、生命保険金(500万円 × 法定相続人の数を超える部分)、加算対象期間内に受けた暦年課税の贈与なども対象です。これらを含めると基礎控除を超えることもあるため、一度書き出して確認しておきたいところです。

生前贈与はいくらまで非課税ですか?

暦年課税なら、1人が1年間に受け取る合計110万円までが非課税です。この枠は受け取る人ごとに判定するため、両親それぞれから110万円ずつ受け取ると合計220万円となり、超えた分が課税対象になります。相続時精算課税を選んだ場合も、2024年(令和6年)1月1日以後は年110万円の基礎控除を使えます。ただし、110万円以下でも加算対象期間内の贈与は相続財産に加算されるため、その点も踏まえて検討することが大切です。

まとめ:生前贈与と相続は「わが家のケース」で選ぶ

生前贈与と相続はわが家のケースで選ぶというまとめを示す見出し画像

ここまで見てきたとおり、生前贈与と相続のどちらを選ぶべきかは、財産の額・種類・目的で入れ替わります。記事の内容を振り返りながら、次に何をすればよいかを整理しましょう。

この記事の要点
  • 単純な税額の比較では、基礎控除の大きい相続が有利になりやすい
  • 小規模宅地等の特例や相続時精算課税など、使える特例によって結論は変わる
  • 不動産を生前に渡す場合は、登録免許税と不動産取得税の負担も含めて考える
  • 暦年贈与の加算期間は最長7年へ延長され、時間の余裕が価値を持つようになった

4つを踏まえると、税額だけで決めるのは避けたほうがよいと分かります。ご家庭の財産の内訳と、渡したい相手や目的を並べたうえで選ぶことが大切です。

判断に迷う部分が出てきたら、PR mediaの無料相談でわが家の状況を整理してみてください。なお、本記事の税制に関する情報は2026年7月時点のものです。制度は改正されますので、実際に判断される際は最新の情報をご確認ください。

相続の悩み、まずは無料で全体像を整理

アンケート回答+本人確認で
アマギフ・PayPay 300円分プレゼント!!

この記事を書いた人

PRmedia相続編集部のアバター PRmedia相続編集部 PRmedia相続編集部

PRmedia相続編集部は、相続に関する手続きや資産整理、不動産・生命保険・税金などの基礎知識を、初めての方にもわかりやすく発信する編集部です。

PR media株式会社を中心に、不動産投資・生命保険・賃貸管理・売買仲介に関わるグループ各社の知見も参考にしながら、「何から始めればよいかわからない」「誰に相談すべきかわからない」といった相続前後の悩みに寄り添う情報提供を行っています。

関連会社・関連ページ
PR media株式会社
トラスティーパートナーズ株式会社
ピーエムサポート株式会社
Asset Plus株式会社

目次