前妻の子に相続させない方法はある?遺留分2分の1の壁と備え方

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前妻の子に相続させない方法はあるのか、遺留分2分の1の壁と備え方を解説する記事のアイキャッチ画像

再婚した夫、あるいはご自身に前妻との子がいる場合、将来の相続で財産がどのように分かれるのか気になるかもしれません。

今の家族にできるだけ多く残したいと思っても、何を調べればよいのか分からず、手が止まっている方もいるのではないでしょうか。

前妻の子がいる相続について、次のようなお悩みを抱えがちです。

こんな疑問をお持ちではありませんか?
  • 前妻の子にも財産が渡るのか、取り分はどのくらいなのかが分からない
  • 今の妻や子に多く残すために、生前にできる対策を知りたい
  • 相続が起きたあと、前妻の子にどう連絡して手続きを進めるのかを把握しておきたい

結論からお伝えすると、前妻の子も法律上の相続人です。「遺留分」という最低限の取り分が保障されているため、取り分をゼロにすることはできません。

ただし、遺言書や生前贈与、生命保険を組み合わせれば今の家族に多く残す形に近づけることは可能です。反対に、仕組みを知らずに相続を迎えると、思わぬ負担を抱えることがあります。

財産が自宅中心のご家庭では遺留分を現金で用意できず、住まいをはじめ財産全体の扱いに悩むおそれがあります。

当メディアの調査では、親と相続について「具体的に話したことがある」と答えた方は10.0%にとどまりました。

ほかの回答は「話したことはまったくない」が約37.7%、「話題に出たことはあるが、深く話していない」が約28.0%です。

(当メディア調査/2026年5月・親がご存命の人300名)

相続の話し合いは、多くの家庭で後回しになりやすい実態がうかがえます。家族の構成が少し複雑になる前妻の子の相続では、切り出しにくさを感じるのも自然なことです。

本記事では、遺留分の仕組みや取り分を合法的に減らす生前対策、遺言書のポイント、相続が起きたあとの手続きまでを順番に整理しました。

読み終えるころには、ご夫婦で何を話し合い、どこから準備を始めればよいかが見えてくるはずです。

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目次

前妻の子に相続させないことはできるのか

前妻の子も相続人で遺留分があるため取り分をゼロにはできないことを示す見出し画像

前妻の子に財産を渡さずに済む方法があるのかどうかは、対策を考えるうえで最初に確認しておきたい点です。結論として、前妻の子は後妻の子と同じ立場の相続人で、取り分をゼロにはできません。ここでは、その理由を3つの観点から確認します。

離婚しても前妻の子は相続人になる

夫婦は離婚すると法律上の他人になりますが、親と子の関係は離婚後も続きます。民法では財産を遺す方(被相続人)の子は第1順位の相続人と定められており、親権がどちらにあったか、一緒に暮らしていたかどうかは関係ありません。

家族それぞれの立場ごとに、相続人になるかどうかを表にまとめました。

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立場相続人になるか理由
後妻(相続発生時の妻)なる配偶者は常に相続人になるため
前妻ならない離婚した時点で配偶者ではなくなるため
前妻の子なる離婚後も父親との親子関係が続くため
後妻の子(夫との子)なる前妻の子と同じ第1順位の相続人のため
前妻の子の子(孫)前妻の子がすでに亡くなっている場合はなる代襲相続により、親に代わって相続人になるため
後妻の連れ子(養子縁組なし)ならない夫と法律上の親子関係がないため

表のとおり、前妻は相続人になりませんが、前妻の子は後妻の子と並んで相続人になります。前妻の子が先に亡くなっているときは、その子である孫が代わりに相続人となる「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」が起きる点も押さえておきましょう。

一方、後妻の連れ子は、夫と養子縁組をしていなければ相続人にはなりません。家族の中で誰が相続人になるのかを、家系図のような形で一度まとめておくと安心です。

参考:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
参考:e-Gov法令検索「民法(第887条・第890条)」

相続分は後妻の子と同じになる

民法では、相続人ごとの取り分の目安として「法定相続分(ほうていそうぞくぶん)」が決められています。前妻の子と後妻の子の法定相続分に差はなく、子ども同士は全員が同じ割合です。

よくある家族構成を4つ挙げて、それぞれの法定相続分を比べてみましょう。

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家族構成後妻前妻の子後妻の子
後妻・前妻の子1人・後妻の子1人2分の14分の14分の1
後妻・前妻の子1人(後妻との子なし)2分の12分の1―
後妻・前妻の子2人・後妻の子1人2分の1各6分の16分の1
前妻の子1人・後妻の子1人(後妻が先に死亡)―2分の12分の1

※2026年10月時点の情報です。

配偶者と子が相続人になる場合、配偶者が2分の1、残りの2分の1を子の人数で均等に分けるのが基本の考え方です。

後妻との間に子がいないご夫婦でも、前妻の子がいれば相続人は後妻と前妻の子になります。この場合、夫の親や兄弟姉妹は相続人になりません。

法定相続分は、遺言書や相続人全員の話し合いで変えられます。ただし、次の見出しで説明する遺留分が下限として残るため注意が必要です。

ご自身の家族構成ではどの割合になるのかを先に確かめておくと、対策を考えやすくなります。

参考:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
参考:e-Gov法令検索「民法(第887条・第890条)」

遺留分があるため取り分をゼロにはできない

前妻の子の取り分をゼロにできない最大の理由が、「遺留分(いりゅうぶん)」の存在です。遺留分とは、一定の相続人に法律で保障された最低限の取り分のことです。

遺言書で分け方を指定しても、遺留分を侵害された相続人は、侵害額に相当する金銭を請求できます。

取り分をゼロにできない理由を、ポイントごとに整理しました。

取り分をゼロにできない理由
  • 遺言書に「全財産を妻に相続させる」と書いても、前妻の子は遺留分にあたる金額を請求できる
  • 相続放棄は相続が始まってからしか手続きできず、生前に約束させることはできない
  • 「相続しない」と書いた念書や覚書だけでは、法的な効力がない(遺留分の事前放棄は、本人が家庭裁判所の許可を得た場合に限り可能)

3つに共通しているのは、前妻の子の意思に反して相続の権利を奪うことはできないという点です。遺言書で分け方を指定することはできても、遺留分までは一方的に消せません。

そのため対策の目標は「ゼロにする」ではなく、「取り分を合法的に減らしつつ、遺留分の請求に備える」ことに置くのが現実的です。遺留分がどのくらいの金額になるのかは、次の章で計算例を使って確認していきます。

参考:e-Gov法令検索「民法(第1042条)」
参考:裁判所「相続の放棄の申述」

合わせて読みたい
💡 専門家からの補足

「前妻の子は、前妻の再婚相手と養子縁組をしたから、もう父親の相続人ではない」と考える方もいるかもしれません。一般的な養子縁組(普通養子縁組)では、養親との親子関係が加わるだけで、実の父親との関係はそのまま続くのが原則です。

そのため、前妻の子は実父の相続人であり続けます。例外は、実の親との関係が終了する「特別養子縁組」が成立している場合です。

前妻の子がどのような縁組をしているかは戸籍で確認できるため、思い込みで判断せず、事実を確かめてから対策を考えましょう。

前妻の子の遺留分の仕組み

前妻の子の遺留分が法定相続分の2分の1でお金で請求され期限があることを示す見出し画像

前妻の子の取り分をゼロにできないと分かったら、次は遺留分がどのくらいになるのかを知っておきたいところです。遺留分の割合や支払い方法、請求できる期限の3点を、計算例を交えて見ていきましょう。

遺留分は法定相続分の2分の1になる

配偶者や子が相続人に含まれる場合、遺留分は遺産全体の2分の1です。これを各相続人の法定相続分で分けるため、前妻の子1人あたりの遺留分は、その子の法定相続分の2分の1になります。

夫の財産が6,000万円で、相続人が後妻・前妻の子1人・後妻の子1人のケースを考えます。

遺言書に「全財産を後妻に相続させる」と書いた場合の遺留分を、2026年10月時点の民法にもとづいて計算しました。

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相続人法定相続分法定相続分での金額遺留分の割合遺留分の金額
後妻2分の13,000万円4分の11,500万円
前妻の子4分の11,500万円8分の1750万円
後妻の子4分の11,500万円8分の1750万円

このケースでは、前妻の子は後妻に対して750万円を請求できる計算です。なお、この遺言では後妻の子の遺留分も侵害されているため、法律上は後妻の子も後妻に750万円を請求できます。

遺言書がなければ1,500万円が目安だった取り分を、遺言書によって半分の750万円まで減らせるともいえます。

実際の遺留分は、相続財産に一定の生前贈与を加え、借入金などの債務を差し引いた金額をもとに計算するのが基本です。

この計算例はあくまで一例で、財産の内容や贈与の有無によって金額は変わります。正確な金額は、相続に詳しい弁護士に試算してもらうと確実です。

参考:e-Gov法令検索「民法(第1042条・第1043条)」
参考:裁判所「遺留分侵害額の請求調停」

請求されると金銭で支払うことになる

2019年7月1日に施行された民法改正により、遺留分は「遺留分侵害額請求」としてお金で請求される仕組みに変わりました。自宅の持ち分を前妻の子と共有する形ではなく、不足している金額を現金で支払うのが原則です。

先ほどの計算例(財産6,000万円・前妻の子の遺留分750万円)で、財産の内訳だけを変えて比べてみましょう。

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比較項目ケースA:預貯金が多い家庭ケースB:財産が自宅中心の家庭
自宅の評価額4,000万円5,500万円
預貯金2,000万円500万円
前妻の子の遺留分750万円750万円
預貯金で支払えるか支払える(1,250万円が残る)250万円不足する

財産の総額が同じでも、ケースBのように自宅の割合が高いと、遺留分を支払う現金が足りなくなります。後妻が自宅に住み続けたくても、不足分を用意するために売却や借り入れを検討しなければならない事態も考えられます。

すぐに支払えない場合、裁判所に支払いの期限を延ばしてもらうよう求める制度もありますが、支払い自体がなくなるわけではありません。

財産のうち現金がどのくらいあるかを早めに確認し、支払いの資金をどう準備するかまで考えておきましょう。

参考:法務省「遺留分制度の見直し」
参考:e-Gov法令検索「民法(第1046条・第1047条)」

請求できる期間には期限がある

遺留分侵害額請求には、民法で期限が定められています。期限を過ぎると請求の権利は時効などによって消滅しますが、1年の期限の数え始めは「前妻の子が知った時」が基準になる点に注意が必要です。

2つの期限を、それぞれの数え始め(起算点)とあわせて整理しました。

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期限数え始め(起算点)内容
1年相続の開始と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時知ってから1年間請求しないと、時効によって消滅する
10年相続が開始した時前妻の子が相続を知らなくても、10年が過ぎると請求できなくなる

※2026年10月時点の情報です。

請求は、内容証明郵便などで「遺留分を請求します」という意思を相手に伝える方法で行うのが一般的です。

裁判所によると、家庭裁判所に調停を申し立てただけでは、この意思を伝えたことにはならないとされています。また、意思を伝えたあとの金銭の支払いを求める権利には、別に5年の時効がある点にも注意が必要です。

後妻の立場からすると、「1年たてば請求されない」と考えるのは早計です。

前妻の子が相続を知らないうちは1年の期限が進まないため、連絡を先延ばしにしても請求の可能性はしばらく残り続けます。

期限をあてにするより、請求される前提で準備を整えておくほうが、気持ちの面でも落ち着いて対応できます。

参考:裁判所「遺留分侵害額の請求調停」
参考:e-Gov法令検索「民法(第1048条)」

💡 専門家からの補足

遺留分の計算で見落とされやすいのが、自宅の評価額です。遺留分の計算では、原則として相続が発生した時点の時価で不動産を評価すると考えられています。そのため、相続税の計算に使う路線価をもとにした金額とは、差が出る場合があります。

自宅の時価が想定より高ければ、そのぶん遺留分の金額もふくらむ点に気をつけましょう。

不動産会社の査定などで自宅のおおよその価値を早めに知っておくと、支払いに必要な資金の見当もつけやすくなります。

前妻の子の取り分を減らすためにできる生前対策

遺言書・生前贈与・生命保険・遺留分の放棄で前妻の子の取り分を減らす4つの生前対策を示す見出し画像

前妻の子の取り分は「ゼロ」にはできませんが、生前の準備によって合法的に減らすことは可能です。ここでは、遺言書・生前贈与・生命保険・遺留分の放棄という4つの方法を、それぞれの特徴とあわせて紹介します。

遺言書で後妻や後妻の子に多く残す

遺言書を作成すると、法定相続分とは異なる割合で財産を分けるよう指定できます。後妻や後妻の子に多く残す内容にしておけば、前妻の子が受け取れる金額を、法定相続分より少ない遺留分の水準まで抑えられます。

遺言書で相続させる方法のほかにも、似た効果を持つ渡し方があるため、代表的な3つを比べてみましょう。

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方法仕組み特徴
遺言書で相続させる遺言書で、誰にどの財産を渡すかを指定する相続人に対して財産の分け方を決められる
遺贈(いぞう)遺言書によって、財産を特定の人に贈る相続人以外(連れ子や孫など)にも渡せる
死因贈与(しいんぞうよ)「自分が亡くなったら贈る」と、生前に相手と約束する贈与契約相手の合意が必要で、遺贈に近いルールが適用される

いずれの方法でも、前妻の子の遺留分を消すことはできません。それでも、何も準備しない場合と比べると、前妻の子の取り分を法定相続分の半分まで抑えられる点は大きな違いです。

一方で、遺言書について家族で話し合っている家庭は多くないようです。

当メディアの調査で、親と相続が話題に出たことがある187名に話したテーマを尋ねたところ(複数回答)、「遺言書の有無・内容」は約18.2%でした。

「預貯金の口座・残高」の約49.2%、「実家の処分・継承」の約43.3%と比べると低く、遺言書は家族の話題にのぼりにくいテーマであることがうかがえます。

(当メディア調査/2026年5月・親と相続について話したことがある人187名・複数回答)

前妻の子がいるご家庭にとって、遺言書は取り分を調整できる代表的な手段の一つです。トラブルを避けるための作り方のポイントは、後の章で詳しく解説します。

参考:e-Gov法令検索「民法(第554条・第902条・第964条)」

生前贈与で財産を移しておく

生前贈与とは、元気なうちに財産を家族などに渡しておく方法です。相続の時点で夫の財産が減っていれば、そのぶん前妻の子の遺留分を計算する土台も小さくなる可能性があります。

ただし、生前贈与した財産がすべて遺留分の計算から外れるわけではありません。生前贈与を検討するときに押さえておきたいポイントは、次のとおりです。

生前贈与で押さえておきたいポイント
  • 相続人(後妻や後妻の子)への贈与は、相続開始前10年以内のもので、結婚や生活、養子縁組の資金、住まいの援助などにあたるものが遺留分の計算に含まれる
  • 相続人以外(養子縁組をしていない連れ子など)への贈与は、原則として相続開始前1年以内のものが含まれる
  • 贈る側ともらう側の双方が「遺留分を侵害する」と知りながら行った贈与は、時期に関係なく含まれる
  • 婚姻期間が20年以上の夫婦なら、自宅やその購入資金の贈与に「贈与税の配偶者控除」(最高2,000万円、2026年10月時点)を使える。ただし、これは贈与税の特例で、遺留分の計算からは外れない

生前贈与は、時間をかけて計画的に進めるほど効果が出やすい方法です。相続の直前に大きな財産を移しても、遺留分の計算に戻されてしまう可能性が高くなります。

また、婚姻期間が20年未満のご夫婦では配偶者控除を使えないため、贈与税の負担が大きくなることもあります。贈与税や登記の費用については「生前対策をするときの注意点」の章で説明しますので、あわせて確認してください。

参考:e-Gov法令検索「民法(第1044条)」
参考:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」

生命保険の受取人を後妻や後妻の子にする

死亡保険金は、受取人に指定された人が保険会社から直接受け取るお金です。最高裁判所の判例では、相続人が受け取る死亡保険金は原則として遺産分割の対象外とされ、受取人固有の財産として扱われる考え方が示されています。

また、遺留分の計算の対象にも、原則として含まれないとされています。前妻の子がいる相続で生命保険を活用する主なメリットを、3つに整理しました。

生命保険を活用するメリット
  • 受取人に指定した後妻や後妻の子へ、遺産分割の話し合いを経ずにお金を渡せる
  • 夫が保険料を負担し、夫を被保険者とする保険金を相続人が受け取る場合、「500万円×法定相続人の数」まで相続税がかからない(2026年10月時点)
  • 受け取った保険金を、前妻の子から請求された遺留分の支払いに充てられる

特に3つ目は、財産が自宅中心で現金が少ないご家庭にとって見逃せない点です。自宅を手放さずに遺留分を支払う資金を準備する手段として、生命保険を検討する方もいます。

注意したいのは、保険金の額が遺産全体に比べて極端に大きい場合です。

判例では、相続人の間で著しい不公平が生じる特別な事情があるときは、保険金も遺産に持ち戻して計算する(特別受益に準じて扱う)場合があるとされています。遺留分の計算でも、同じように扱われる可能性があります。

なお、非課税枠の「法定相続人の数」には前妻の子も含まれ、例えば法定相続人が3人なら1,500万円です。どの程度の保障額が適切かは家庭ごとに異なるため、保険と相続の両方に詳しい専門家に相談しながら決めましょう。

参考:裁判所「最高裁判所第二小法廷 平成16年10月29日決定(平成16(許)11)」
参考:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」

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前妻の子に遺留分を放棄してもらう

前妻の子が自ら納得したうえで、生前に遺留分を放棄してもらう方法もあります。ただし、相続開始前の遺留分の放棄には、家庭裁判所の許可が必要です。申し立てができるのは前妻の子本人で、夫や後妻が代わりに手続きすることはできません。

よく混同される「相続放棄」との違いを表で比べます。

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項目相続放棄遺留分の放棄
生前に手続きできるかできない(相続開始後のみ)家庭裁判所の許可があればできる
手続きをする人相続人本人遺留分を持つ相続人本人(前妻の子)
手続き後の立場はじめから相続人でなかったことになる相続人のまま(遺産分割の話し合いにも加わる)
期限・時期相続を知った時から3か月以内相続開始前(被相続人の生存中)に申し立てる

表のとおり、遺留分を放棄しても前妻の子は相続人のままです。遺言書がなければ遺産分割で法定相続分を受け取れるため、遺留分の放棄は遺言書の作成とあわせて行う必要があります。

家庭裁判所は、放棄が本人の自由な意思によるものかどうかを重視するといわれています。あわせて、理由に合理性や必要性があるか、見返りとなる贈与などがあるかも考慮の対象です。

夫や後妻が強く迫って放棄させようとしても、本人の自由な意思と認められなければ許可されません。

現実的には、前妻の子との関係が良好な場合に検討可能な方法です。放棄と引き換えに生前贈与を行うなど、相手にとっても納得できる条件をそろえることが前提になります。

なお、申し立てには収入印紙800円分と、裁判所ごとに異なる郵便切手の費用がかかります。

※2026年10月時点の情報です。

参考:裁判所「遺留分放棄の許可」
参考:e-Gov法令検索「民法(第1049条)」
参考:弁護士法人朝日中央綜合法律事務所「遺留分の放棄」

💡 専門家からの補足

「前妻の子を相続人から外す手続きはないのか」と考える方もいます。

「相続人の廃除(はいじょ)」という制度はありますが、対象は親への虐待や重大な侮辱などがあった場合に限られます。長く連絡をとっていないだけでは、認められにくいのが実情です。

現実的な選択肢は、後妻の連れ子と夫の養子縁組です。相続人が増えるため、前妻の子の法定相続分と遺留分は相対的に小さくなります。

ただし、縁組は家族関係そのものを変える手続きなので、家族の意向を確認したうえで判断してください。

遺言書で対策するときのポイント

前妻の子がいる相続で公正証書遺言と自筆証書遺言の違いと遺言書作成のポイントを示す見出し画像

遺言書は、前妻の子がいる相続で取り分を調整するための中心となる手段です。ただし、書き方や形式によっては、かえって争いを招くおそれもあります。作成時に押さえたい4つのポイントを紹介します。

公正証書遺言で作成する

遺言書には主に、公証役場で作る「公正証書遺言」と、自分で書く「自筆証書遺言」があります。前妻の子がいる相続では、遺言書の有効性をめぐって争いになる場面も想定されるため、形式の不備で無効になりにくい公正証書遺言が向いています。

2026年10月時点の情報をもとに、2つの遺言書の違いを作成方法や保管、費用などの観点から比べてみましょう。

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比較項目公正証書遺言自筆証書遺言
作成する人公証人が遺言者の意思を確認して作成遺言者本人が自分で書く
証人2人の立ち会いが必要不要
原本の保管公証役場で保管される自宅など(法務局の保管制度も利用できる)
家庭裁判所の検認不要必要(法務局で保管した場合は不要)
費用財産額などに応じた公証人手数料がかかる作成自体は無料
法務局に保管する場合は1通3,900円

「検認(けんにん)」とは、家庭裁判所が遺言書の状態を確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。遺言書が有効かどうかを判断する手続きではありません。

検認が必要な遺言書は、手続きを終えるまで預貯金の解約や名義変更に使いにくく、相続の手続き全体に時間がかかりやすくなります。

公正証書遺言は、原本が公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。費用はかかりますが、前妻の子との間で遺言書の効力が争点になるリスクを抑えたいなら、有力な選択肢です。

参考:日本公証人連合会「遺言」
参考:裁判所「遺言書の検認」
参考:法務省「自筆証書遺言書保管制度 手数料」

遺言執行者を指定しておく

遺言執行者(いごんしっこうしゃ)とは、遺言書の内容を実現するために、相続手続きを進める役割を担う人です。遺言書の中で指定しておけば、預貯金の解約や不動産の名義変更などを遺言執行者に任せられます。

遺言執行者が担う主な役割は、次のとおりです。前妻の子への通知も含まれている点に注目してください。

遺言執行者の主な役割
  • 就任したら遅滞なく、遺言書の内容を相続人全員(前妻の子を含む)に通知する
  • 相続財産の目録を作成し、相続人に交付する
  • 預貯金の解約や払い戻し、不動産の名義変更などの手続きを進める

通知を受けて前妻の子が遺言の内容を知ると、遺留分を請求できる1年の期限も進み始めます。

遺言執行者がいれば、後妻が前妻の子と直接やり取りする場面を減らせるのが大きなメリットです。

弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者に指定しておくと、前妻の子への連絡も第三者の立場から進めてもらえるため、感情的な行き違いを避けやすくなります。

ただし、遺留分の請求は後妻に対して行われるため、その対応は遺言執行者の役割の範囲外です。

後妻を遺言執行者に指定することも可能ですが、手続きの負担は決して軽くありません。前妻の子との関係も考えると、専門家に任せたほうが落ち着いて進められるケースもあります。誰に依頼するかは、遺言書を作る段階で夫婦で話し合っておきましょう。

参考:e-Gov法令検索「民法(第1007条・第1011条・第1012条)」

付言事項で理由を伝える

付言事項(ふげんじこう)とは、遺言書に添える家族へのメッセージのことです。法的な拘束力はありませんが、なぜこのような分け方にしたのかを本人の言葉で伝えることで、遺言書を読む家族の気持ちがやわらぐ場合があります。

付言事項を書くときに意識したいのは、次の3点です。

付言事項で意識したい3点
  • 前妻の子への感謝や、変わらない思いを率直に書く
  • 今の家族に多く残す理由(住まいを守りたい、生活を支えたいなど)を具体的に示す
  • 誰かを責めたり、比べたりする表現は避ける

日本公証人連合会も、付言事項に限らず遺言がある場合には、相続人が遺言者の意思を尊重して遺留分の主張を思いとどまる場合もあるとしています。

付言事項で必ず請求を防げるわけではありませんが、本人の思いを残す手段として、書き添えておく価値はあるでしょう。

参考:仙台法務局「自筆証書遺言書の付言事項文例集」
参考:日本公証人連合会「遺言」

遺留分に配慮した内容にする

遺言書で「全財産を後妻に」と指定すると、前妻の子から遺留分を請求される可能性が高くなります。あらかじめ前妻の子に遺留分に相当する財産を渡す内容にしておけば、請求そのものが起きにくくなります。

2つの書き方を比べてみましょう(財産6,000万円、前妻の子の遺留分750万円の場合)。

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比較項目パターンA:全財産を後妻にパターンB:前妻の子に遺留分相当額を渡す
前妻の子が受け取る財産0円預貯金750万円
前妻の子からの遺留分侵害額請求される可能性がある原則として請求の対象にならない
後妻が用意する現金請求されれば750万円不要(遺言書どおりに手続きできる)
相続後の関係話し合いや調停になるおそれがあるもめる要素を減らせる

パターンBは前妻の子に一定の財産が渡りますが、後妻が請求への対応に追われる事態を防ぎやすくなります。特に自宅を後妻に確実に残したい場合は、前妻の子には預貯金を渡すなど、財産の種類で分ける工夫も一案です。

ただし、遺留分の金額は財産の評価や生前贈与の有無によって変わります。遺言書を作った後に財産が増えると、渡す額が遺留分に足りなくなることもあります。

遺言書の内容が本当に遺留分に足りているかは、弁護士や司法書士に確認してから作成しましょう。

参考:e-Gov法令検索「民法(第1042条・第1046条)」
参考:裁判所「遺留分侵害額の請求調停」

💡 専門家からの補足

遺言書は一度作ったら終わりではなく、何度でも書き直せます。新しい遺言書の内容が前の遺言書と食い違う場合は、その部分については新しい遺言書の内容が優先される仕組みです。

前妻の子がいるご家庭では、作成後に財産が増えたり自宅を買い替えたり家族構成が変わったりすると、当初の分け方では遺留分に足りなくなるケースも出てきます。

数年に一度、あるいは大きな変化があったときに内容を見直す習慣をつけておくと、遺言書が実情に合わなくなるのを防げます。判断能力がしっかりしているうちでなければ書き直しも難しくなるため、見直しは早めに行いましょう。

生前対策をするときの注意点

持ち戻しや贈与にかかる税金・念書の効力など前妻の子がいる生前対策の注意点を示す見出し画像

生前対策は、進め方を誤ると思わぬ税金がかかったり、前妻の子とのトラブルを招いたりすることがあります。対策を始める前に知っておきたい注意点を、税金と法律の両面から整理しました。

生前贈与や保険金が多すぎると持ち戻される場合がある

一部の相続人だけが生前に受けた特別な利益を「特別受益(とくべつじゅえき)」といいます。特別受益にあたる贈与は、相続財産に足し戻して取り分を計算することがあり、これを「持ち戻し」と呼びます。

財産の渡し方ごとに、持ち戻しや遺留分の計算での扱いを比べました。

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渡し方遺産分割での扱い遺留分の計算での扱い
相続人への生前贈与(住まいや生活資金の援助など)特別受益として持ち戻しの対象になり得る相続開始前10年以内のものは含まれる
遺言書による遺贈特別受益にあたる含まれる
死亡保険金原則として対象外(著しい不公平がある場合は例外あり)原則として含まれないと考えられている
婚姻20年以上の夫婦間での自宅の贈与・遺贈持ち戻しを免除する意思があったと推定される含まれる場合がある

表から分かるように、生前贈与や保険金を使っても、渡し方や金額によっては取り分の計算に戻されることがあります。財産の大部分を保険金に変えるような極端な方法は、例外の扱いを受けるリスクが高まるため、避けたほうが無難です。

「この贈与は持ち戻しの対象になるか」の判断は、家庭の事情によって変わります。対策を進める前に、財産全体のバランスを第三者の目で点検してもらうと安心です。

参考:裁判所「最高裁判所第二小法廷 平成16年10月29日決定(平成16(許)11)」
参考:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」
参考:e-Gov法令検索「民法(第903条・第1044条)」

贈与には贈与税や不動産取得税がかかる

生前贈与で財産を渡すと、相続で引き継ぐ場合より重い税金や費用がかかることがあります。特に自宅などの不動産を贈与するときは、贈与税に加えて登記の費用や不動産取得税がかかる点に注意が必要です。

自宅を後妻に渡す場合を例に、生前贈与と相続の負担を比べます。

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費用の種類生前贈与相続
贈与税・相続税贈与税:年110万円を超えると課税(婚姻20年以上なら配偶者控除で最高2,000万円まで控除)相続税:配偶者は1億6,000万円か法定相続分相当額の多いほうまで課税されない(申告が必要)
登録免許税(名義変更の登記にかかる税金)評価額の2.0%評価額の0.4%
不動産取得税課税(原則4%、土地・住宅は2027年3月31日まで3%)相続による取得は非課税

※2026年10月時点の情報です。

表の「評価額」は、市区町村が固定資産税の計算に使う固定資産税評価額を指します。

例えば評価額が2,000万円の自宅なら登録免許税は生前贈与で40万円、相続で8万円となり、5倍の差があります。司法書士に登記を依頼する場合は、その報酬も別に必要です。

このように、贈与税がかからない範囲で渡せたとしても、登記や不動産取得税を含めると相続より負担が重くなることがあります。実際の税額は評価額や軽減措置の条件によって変わるため、税理士や司法書士に見積もりを依頼してから判断しましょう。

参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
参考:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
参考:国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
参考:総務省「地方税制度 不動産取得税」
参考:e-Gov法令検索「地方税法(第73条の7)」

相続させない念書や覚書には効力がない

「前妻の子に『相続しない』と一筆書いてもらえば安心」と考える方もいますが、こうした念書や覚書に法的な効力はありません。相続の権利は、書面の約束だけで失わせることはできないからです。

よく見かけるものの、法的な効力がない主な取り決めを整理しました。

法的な効力がない主な取り決め
  • 生前に交わした「相続を放棄する」という念書
  • 生前に家庭裁判所の許可を得ずに交わした「遺留分を請求しない」という覚書
  • 離婚の際に前妻と交わした「子は相続しない」という取り決め

いずれも、相続が始まったあとで前妻の子が権利を主張すれば、法律上の取り分を請求できます。書面に署名や押印があっても、この結論は変わりません。

書面で安心するのではなく、前の章で紹介した遺言書や遺留分の放棄の許可など、法律で認められた方法を選ぶことが大切です。

すでに念書を交わしているご家庭は、念書があることを前提にせず、対策を見直してみましょう。前妻の子が同意しているなら、家庭裁判所に遺留分の放棄の許可を申し立ててもらうことも検討できます。

参考:裁判所「相続の放棄の申述」
参考:裁判所「遺留分放棄の許可」

💡 専門家からの補足

「うちは相続税がかからないから、前妻の子の問題も心配いらない」と考えている方は注意が必要です。相続税は税法の問題で、遺留分は民法の問題なので、両者はまったく別の仕組みです。

相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数、2026年10月時点)の範囲に財産が収まるご家庭でも、前妻の子は遺留分を請求できます。

財産の規模に関わらず、「前妻の子がいる」という家族構成そのものが対策を考えるきっかけになると捉えておきましょう。

相続が起きたあとの手続きの流れ

相続後に戸籍の収集から前妻の子への連絡・遺産分割協議まで4つのSTEPで進める流れを示す見出し画像

生前に対策をしていても、相続が起きたあとは前妻の子への連絡が欠かせません。前妻の子に知らせずに相続手続きを終えることはできないため、後妻が迷わないよう、4つのステップに分けて流れを確認しましょう。

STEP1 戸籍を集めて相続人を確定する

相続手続きでは、被相続人(財産を遺した方)の出生から最後までの戸籍をすべて集め、相続人が誰なのかを確定させます。前妻の子の存在も、この戸籍によって公的に確認されます。

相続人の確定に必要となる主な書類は次のとおりです。

相続人の確定に必要な主な書類
  • 被相続人の出生から最後までの戸籍(除籍謄本や、制度改正前の古い戸籍を含む)
  • 相続人全員(前妻の子を含む)の現在の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票(住民登録が消されたことを示す書類)

転籍や結婚を重ねていると、戸籍が複数の市区町村に分かれていることがあります。2024年3月1日から始まった「広域交付」を使えば、本籍地以外の窓口でもまとめて請求できるようになりました。

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項目戸籍証明書の広域交付の内容
請求できる人本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属
請求できる窓口本籍地以外の市区町村の窓口でも請求できる
本人確認顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)が必要
注意点郵送や代理人による請求はできず、一部の戸籍は対象外

後妻は配偶者として、夫の戸籍を広域交付で請求できます。ただし、コンピュータ化されていない古い戸籍は対象外のため、その場合は本籍地の市区町村に請求しましょう。

参考:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
参考:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」

STEP2 戸籍の附票で前妻の子の住所を調べる

前妻の子の連絡先が分からない場合は、「戸籍の附票(ふひょう)」を使って住所を調べる方法があります。戸籍の附票とは、本籍地の市区町村で管理されている、その戸籍に入っている人の住所の移り変わりを記録した書類です。

戸籍をたどって前妻の子の住所を調べる流れを、表にまとめました。

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手順取得する書類分かること
1被相続人の戸籍(除籍謄本など)前妻の子の名前と、前妻の子が移った先の本籍
2前妻の子の現在の戸籍謄本前妻の子の現在の本籍と戸籍の状況
3前妻の子の戸籍の附票前妻の子の現在の住所

後妻は、前妻の子の配偶者や直系血族(親や子など)にあたりません。そのため、前妻の子の戸籍謄本や附票の請求は「第三者請求」となり、広域交付の対象外です。

自治体によっては、相続手続きに必要であるなど正当な理由があれば、それを示す戸籍などの資料を添えて請求できます。ただし、必要書類は市区町村ごとに確認が必要です。

自分で調べるのが難しい場合や、請求が認められない場合は、弁護士や司法書士に依頼する方法もあります。弁護士や司法書士は、依頼を受けた業務に必要な範囲で戸籍などを取り寄せられるため、連絡先の調査から手紙の送付までまとめて相談できます。

参考:京都市「第三者請求(法人又は個人による戸籍の請求)」
参考:e-Gov法令検索「住民基本台帳法(第20条)」

STEP3 手紙で相続の開始を知らせる

前妻の子の住所が分かったら、手紙で相続が始まったことを知らせます。これまで交流がなかった場合、突然の電話や訪問は相手を驚かせるおそれがあるため、落ち着いて読んでもらえる手紙のほうが適しています。

初めて連絡する手紙に書いておきたい項目は、次のとおりです。

手紙に書いておきたい項目
  • 差出人の名前と、被相続人との関係
  • 相続が発生した日と、前妻の子が相続人であること
  • 遺言書の有無と、ある場合はその概要
  • 財産のおおまかな内容(借入金などの負債も含む)と、今後の手続きの進め方
  • 連絡先と、返信をお願いしたい時期の目安

前妻の子は、この手紙で相続の開始を知った時から3か月以内に、相続放棄をするかどうかを判断する必要があります。そのため、財産の内容はできるだけ正確に伝えましょう。

手紙は、届いたことが記録に残る簡易書留などで送ると安心です。返信がない場合や話し合いが難しいと感じた場合は、無理に自分だけで進めようとせず、弁護士などに間に入ってもらうことを検討してください。

参考:裁判所「遺産分割調停」

STEP4 前妻の子を含めて遺産分割協議をする

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きです。協議は前妻の子を含む相続人全員が合意しなければ成立しないため、一部の相続人だけで決めた内容は無効になります。

遺言書があるかどうかで、手続きの進め方は大きく変わります。

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比較項目遺言書がある場合遺言書がない場合
遺産分割協議原則として不要(遺言書にない財産は協議が必要)相続人全員での協議が必要
前妻の子の関わり方遺言執行者などから遺言の内容が通知され、遺留分を請求される可能性がある協議に参加し、遺産分割協議書に署名・押印する
不動産の名義変更遺言書をもとに手続きできる
(自筆証書遺言は、法務局で保管したものを除き検認後)
遺産分割協議書をもとに手続きする

遺言書があれば、前妻の子と分け方を一から話し合う必要がなくなるため、後妻の負担は大きく軽くなります。反対に遺言書がない場合は、前妻の子の同意がなければ預貯金の解約や自宅の名義変更も進みません。

ただし預貯金は、1つの金融機関につき150万円を上限に、一定額までなら遺産分割の前でも単独で払い戻せる仮払い制度があります。

相続した不動産は、取得を知った日から3年以内に相続登記をすることが義務づけられており、相続税がかかる場合は10か月以内の申告も必要です。

協議がまとまらない場合でも、相続人であることを法務局に申し出る「相続人申告登記」をすれば、登記の義務は果たせます。

一方、相続税の申告期限までに協議がまとまらないと、配偶者の税額軽減などの特例をいったん使えません。その結果、一時的に納税の負担が重くなることがあります。

協議がまとまらないときは、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法もあるため、早い段階で弁護士に相談しておくと期限に追われずに済みます。

参考:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
参考:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
参考:裁判所「遺産分割調停」

合わせて読みたい
💡 専門家からの補足

前妻の子との最初のやり取りで意識したいのは、財産の情報を包み隠さず伝えることです。財産の一部しか知らされていないと感じると、相手は不信感を抱き、話し合いがこじれる原因になりがちです。

財産目録(財産の一覧表)を作成し、預貯金の残高や不動産の評価額の根拠を添えて共有すると、話し合いの土台がそろいやすくなります。

遺言執行者がいる場合は、目録の作成と交付も執行者の役割です。後妻が一人で抱え込まず、第三者を介してやり取りすることも、関係を穏やかに保つための方法の一つです。

前妻の子への遺留分の備えで迷ったらPR mediaへ無料相談

前妻の子への遺留分に備える資金や自宅の扱いをPR mediaへ無料相談できることを示す見出し画像

前妻の子の遺留分に備えるには、遺言書だけでなく、支払いの資金や自宅の扱いまで含めて考える必要があります。PR mediaでは、相続を入口に、ご家庭の財産に合った備え方を一緒に整理する無料相談を受け付けています。

「遺留分を請求されたら、自宅を手放すことになるのでは」と不安に感じる方もいるでしょう。

PR mediaでは、グループとして不動産と生命保険の両面を扱っており、遺留分に備える資金と自宅の扱いを横断的に相談できます。

PR mediaで相談できる主な内容を表にまとめました。

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お悩みPR mediaで相談できること
遺留分を支払う現金が足りるか不安財産の内訳の整理と、生命保険を使った資金準備の考え方
自宅に住み続けながら備えたい自宅の評価と、住み続けながら現金化するリースバックの検討
使っていない実家や空き家がある不動産の評価・活用・売却・空き家買取の検討
生前贈与も含めて考えたい生前贈与を含めた財産の渡し方の整理

リースバックとは、自宅を売却して現金を受け取ったあと、買主と賃貸借契約を結んでそのまま住み続ける仕組みです。住まいを変えずに遺留分の支払い資金を用意できる可能性がある点が、この方法の特徴といえます。

一方で、売却価格や家賃の条件はケースによって異なるため、ほかの方法と比べながら検討しましょう。

相談料は無料です。PR mediaは、特定の方法を勧めるのではなく、ご家庭の状況に合う備え方を一緒に整理する立場で相談を受けています。

遺言書の作成や遺留分の交渉は弁護士・司法書士、個別の税額計算は税理士の領域となるため、必要に応じて各専門家と連携します。

相談を始めるにあたって、いきなり面談を申し込む必要はありません。1分ほどで回答できるアンケートから、気軽にご登録いただけます。

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💡 専門家からの補足

相談前に、家族関係と財産のメモを用意しておくと、話がスムーズに進みます。家族関係については、前妻の子の人数と現在の連絡状況、後妻との子や連れ子の有無、養子縁組の有無を書き出しておきましょう。

財産は、自宅の所在地、預貯金のおおよその残高、加入中の生命保険と受取人が分かれば十分です。

金額はおおよその数字でも構いませんので、気負わずにメモしてみてください。

前妻の子がいる相続では家族関係の情報が備え方を大きく左右するため、手元で整理しておくと、相談の場で確認できることが増えます。

前妻の子の相続に関するよくある質問

前妻の子に知らせずに手続きできるかや生前の相続放棄など前妻の子の相続に関するよくある質問をまとめた見出し画像

前妻の子の相続について、よく寄せられる疑問にお答えします。

前妻の子に知らせずに相続手続きを進められますか?

ほとんどの場合、できません。

遺言書がない場合は、遺産分割協議に前妻の子の合意が必要です。預金の払い戻しや自宅の登記の変更も、原則として相続人全員の書類がそろわないと進められません。

遺言書がある場合は協議を省けますが、遺言執行者がいれば相続人全員への通知は義務です。自筆証書遺言の検認でも、家庭裁判所から相続人全員に通知が届きます。

遺言執行者を指定していない公正証書遺言でも、知らせないままでは遺留分を請求される可能性が最長10年残ることに注意が必要です。

やり取りに不安がある場合は、弁護士や司法書士を遺言執行者に指定しておくと、連絡や手続きを任せられます。

前妻の子に生前に相続放棄を頼むことはできますか?

頼んでも、生前に相続放棄はできません。相続放棄は、相続の開始を知った時から3か月以内に、本人が家庭裁判所で行う手続きだからです。

生前にとれる手段は、家庭裁判所の許可を得て行う「遺留分の放棄」です。申し立てるのは前妻の子本人で、本人の自由な意思が前提になります。

また、遺留分を放棄しても相続人のままなので、遺言書とあわせて準備しましょう。見返りの贈与なども含め、相手が納得できる形で話し合うことが大切です。

後妻が亡くなったあと、自宅は前妻の子に渡りますか?

後妻が自宅を相続していれば、原則として前妻の子には渡りません。

前妻の子と後妻には法律上の親子関係がなく、前妻の子は後妻の相続人にならないためです。

後妻の相続人は、後妻の子、いなければ後妻の親や兄弟姉妹です。ただし、次の場合は前妻の子に渡ることがあります。

  • 前妻の子と後妻が養子縁組をしている
  • 後妻が遺言書で前妻の子に遺贈する
  • 夫の相続で、後妻が「配偶者居住権」を、前妻の子が自宅の所有権を取得している

夫から後妻、後妻からその先へと、2回の相続を見据えて財産の行き先を考えておきましょう。

まとめ:前妻の子の相続は遺留分を見込んで、遺言と資金の準備を早めに

前妻の子の相続は遺留分を見込んで遺言と資金の準備を早めに進めるとまとめた見出し画像

前妻の子も相続人で、遺留分がある以上、その取り分をなくすことはできません。それでも、生前の準備を重ねれば、今の家族により多くの財産を残せます。ここまでの内容を、5つの要点で振り返ります。

この記事のまとめ
  • 前妻の子は後妻の子と同じ割合の法定相続分を持ち、その2分の1が遺留分として保障される
  • 遺言書で今の家族への配分を増やせば、前妻の子の取り分を遺留分の水準まで抑えられる
  • 遺留分は金銭で請求されるため、財産が自宅中心の家庭は生命保険などで支払い資金を準備しておきたい
  • 念書や覚書に効力はなく、生前の遺留分の放棄には家庭裁判所の許可が必要
  • 相続が起きたら前妻の子への連絡は欠かせず、遺言執行者を指定しておくと手続きを任せられる

5つの要点に共通するのは、準備の有無によって、相続後の後妻の負担が大きく変わるということです。

とはいえ、相続の準備を進められている家庭はまだ多くありません。当メディアは2026年6月にも、親がご存命の方300名を対象に調査を行いました。

終活(親の資産や希望の整理)について家族と「具体的に話し合ったことがある」方は、約10.3%にとどまっています。約50.3%は「話したことはない」という回答でした。

相続税について分かりにくいことを尋ねた設問(最大3つまで回答)では、「誰に相談すればよいか」を挙げた方も約24.3%いました。

(当メディア調査/2026年6月・親がご存命の人300名)

準備の途中にある家庭が多い今の段階で夫婦の話し合いを始めておけば、選べる対策の幅を広く保ったまま備えを進められます。ご夫婦だけで判断に迷うときは、1分で回答できるPR mediaのアンケートから、気軽に相談してみてください。

※本記事の制度に関する情報は2026年10月時点のものです。制度は改正されることがあるため、実際に対策を進める際は最新の情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

PRmedia相続編集部のアバター PRmedia相続編集部 PRmedia相続編集部

PRmedia相続編集部は、相続に関する手続きや資産整理、不動産・生命保険・税金などの基礎知識を、初めての方にもわかりやすく発信する編集部です。

PR media株式会社では、代表取締役の藤森 何意と編集部員が、一般社団法人 相続診断協会認定の「相続診断士」資格を保有しています。

PR media株式会社を中心に、不動産投資・生命保険・賃貸管理・売買仲介に関わるグループ各社の知見も参考にしながら、「何から始めればよいかわからない」「誰に相談すべきかわからない」といった相続前後の悩みに寄り添う情報提供を行っています。

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