実家のお墓を自分が引き継ぐことになりそうだと感じながら、正直なところ気が進まない方は少なくありません。遠方で通えない、管理の費用や手間が重い、そもそも継ぐ人がいないなど、事情はご家庭によってさまざまです。
- お墓の承継は断れるのかどうかが分からない
- 引き継いだ場合に、どのくらいの費用と手間がかかるのかを知りたい
- 引き継がずに済ませる方法と、その進め方を把握できるようになりたい
お墓は預貯金や不動産と同じルールでは引き継がれず、相続とは別の仕組みで扱われます。この違いを知らないまま調べ続けると、本当は選べたはずの方法を見落としたまま抱え込むことになりかねません。
仕組みを理解しておけば、ご家族と落ち着いて話し合う材料がそろいます。
当メディアの調査で、終活について親や家族と話し合ったことがあるかを尋ねました。「話したことはない」が50.3%、「なんとなく話題に出た程度」が39.3%という結果です。合わせて約9割の方が、具体的な話し合いには至っていません(当メディア調査/2026年6月・親がご存命の人300名)。
終活の話し合いが進まず、お墓の行き先も決まらないまま時間が過ぎているご家庭は珍しくないという状況が読み取れます。
本記事では、承継を断れるのかという結論から、引き継いだときの負担までを整理します。あわせて、引き継ぎたくないときの選択肢と墓じまいの流れも解説します。
読み終えるころには、ご家族と何を話し合えばよいかが見えてくるはずです。なお、本記事の制度に関する情報は2026年8月時点のものです。
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当メディア『タクソウ(託す相続)』は、PR media株式会社(東京都渋谷区/2018年設立)が運営しています。代表取締役の藤森 何意は、相続の総合的な知識を持つ「相続診断士」の資格を保有。PR mediaは保険代理事業を展開するとともに、不動産の売買・賃貸管理を手がける企業グループに属し、相続対策と関わりの深い不動産・保険分野の実務知見を有しています。
当サイトの記事は、国税庁:相続税・贈与税に関する情報、国税庁:統計情報(相続税の申告事績等)、裁判所:司法統計、法務省 等の公的データと、グループでの不動産・保険業務における実務経験に基づいて作成しています。個別の税務・法律のご判断については、税理士・司法書士等の専門家へのご相談をおすすめしています。
お墓は誰が引き継ぐことになるのか

お墓は預貯金や不動産とは別のルールで引き継がれます。誰がどのような形で引き継ぐことになるのか、その仕組みから確認します。
お墓は「祭祀(さいし)財産」で相続財産とは別に扱われる
お墓や仏壇、位牌などは「祭祀財産」と呼ばれ、預貯金や不動産とは切り離して扱われます。
祭祀とは、ご先祖を祀(まつ)ることを指す言葉です。民法第897条では、お墓などはご先祖を祀る役割を担う人が引き継ぐと定められています。
| 相続財産 | 祭祀財産 | |
|---|---|---|
| 具体例 | 預貯金、実家の土地・建物、株式、借入金 | お墓、墓地の使用権、仏壇・仏具、位牌、家系図 |
| 引き継ぐ人 | 法定相続人(法律で定められた相続人。配偶者や子など) | 祭祀承継者(原則として1人) |
| 分け方 | 相続人全員の話し合いで決める | 話し合いの対象外。1人が引き継ぐ |
| 相続放棄との関係 | 放棄すれば引き継がない | 放棄の対象外なので手放せない |
| 相続税 | かかる場合がある | 原則としてかからない |
表のとおり、お墓は遺産分割の話し合いに乗らない財産です。
兄弟姉妹で「お墓は誰のものか」を争う場面が生じにくい一方、預貯金の分け方とは切り離して考える必要があります。実家の資産を整理するときは、お墓の話とお金の話を分けて進めると混乱が減ります。
参考:e-Gov法令検索「民法(第897条)」
参考:国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」
相続財産の分け方を決める遺産分割協議については下記の記事にて詳しく解説しています。

お墓を引き継ぐ人を「祭祀承継者」という
祭祀財産を引き継ぎ、お墓や仏壇の管理を担う人を「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)」と呼びます。
祭祀承継者が受け持つ役割は、おおむね次のとおりです。
- 墓地の使用者として名義人になる
- 年間管理料を納め、墓地の管理者と連絡を取る
- 納骨や法要のときに窓口として動く
- お墓を今後どうするかを判断する
注目したいのは、4つ目の判断する権限です。
法律には「毎年お参りしなければならない」「特定の宗派で供養しなければならない」といった義務までは書かれていません。
名義人になることで、お墓の今後を決められる立場にもなります。(2026年8月時点)
参考:e-Gov法令検索「民法(第897条)」
祭祀承継者の決まり方
祭祀承継者は、3つの段階を経て決まります。親が指定していればその内容が優先され、指定がなければ慣習によって定まる流れです。どちらもはっきりしない場合に、家庭裁判所が判断します。
| 順位 | 決まり方 | 具体的なイメージ |
|---|---|---|
| 1 | 親(被相続人)による指定 | 遺言に書かれている、または生前に本人が伝えていた |
| 2 | 慣習 | 明確な指定がなく、その家や地域の慣わしに従って決まる |
| 3 | 家庭裁判所の調停・審判 | 指定も慣習もはっきりせず、親族で意見がまとまらない |
実際には1か2の段階で決着することがほとんどで、3まで進むのは意見が対立したときに限られます。
指定は遺言に限りません。口頭で伝えられていた内容も指定として扱われる場合があります。親御さんがご存命なら、意向を書き残してもらうだけで後のやり取りが穏やかになります。
参考:東京弁護士会「(11)祭祀承継者」
長男以外(次男や娘)が引き継ぐこともできる
「お墓は長男が継ぐもの」という決まりは、法律で定められていません。条文では「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」と定められているだけで性別や続柄、同居の有無は条件に含まれていないためです。
加えて、「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」とも定められています。そのため、承継者の範囲はかなり広くなるのです。
祭祀承継者になれる人には、次のような例があります。
- 長男以外の子(次男・三男・娘)
- 配偶者
- 孫、甥、姪
- 相続人ではない親族
- 事情によっては、血縁関係のない方
選択肢がこれだけ広いということは、誰が担うのが現実的かをご家族で相談できるということでもあります。
住んでいる場所、費用を負担できるか、お寺との付き合いを続けられるかといった条件から考えてみてください。
長男という立場だけを理由に、1人で背負い込む必要はありません。
引用:e-Gov法令検索「民法(第897条)」
相談の場でよく聞くのが、「お墓を継ぐ分、遺産を多くもらえるはずだ」というお話です。制度としては、お墓は遺産分割の対象外なので、管理を担うことで取り分が自動的に増える仕組みにはなっていません。
ただし、話し合いのなかで管理の負担を考慮し、分け方を調整するご家庭は実際にあります。制度上は別扱いですが、話し合いのなかでは考慮できます。この2つを分けて整理しておくと、感情的な行き違いを避けやすくなるでしょう。
お墓の承継は拒否できるのか

親から指定された場合に断れるのか、相続放棄をすれば手放せるのか。判断の分かれ目になりやすい2点について、法律の定めとあわせて確認します。
祭祀承継者に指定されると原則として拒否できない
親から祭祀承継者に指定された場合、その立場そのものを断ることは原則としてできないと考えられています。
民法には、相続放棄にあたるような「引き継ぎません」と申し立てる手続きが、祭祀財産については設けられていないためです。(2026年8月時点)
| 相続財産(預貯金・不動産など) | 祭祀財産(お墓・仏壇など) | |
|---|---|---|
| 引き継がない手続き | 相続放棄(家庭裁判所へ申述) | 制度として設けられていない |
| 期限 | 相続の開始を知ったときから原則3か月以内 | 期限の定めなし |
| 断れるか | 手続きをすれば引き継がずに済む | 原則として困難 |
| 引き継いだあと | 放棄の撤回は原則できない | 手放す方法が複数ある |
特に大切なのが、表のいちばん下の行です。
断れないのは立場についてであり、お墓そのものを永久に維持する義務までは生じません。供養の方法や続け方は、承継者が判断できる範囲に含まれます。
なお、指定が有効かどうかを争う場面や、親族間の対立を解決する場面は弁護士の業務にあたります。実際に揉めている場合は、一般論で判断せず専門家にご相談ください。
参考:e-Gov法令検索「民法(第897条)」
相続放棄をしてもお墓の承継は避けられない
相続放棄をしても、お墓を手放すことはできません。相続放棄は相続財産を引き継がないための手続きであり、お墓はその相続財産から外れた祭祀財産だからです。借入金を理由に放棄した方が、祭祀承継者としてお墓だけを引き継ぐ例もあります。
相続放棄をした場合に、なくなるものと残るものを整理します。
- なくなる:預貯金、実家の土地・建物、株式などのプラスの財産
- なくなる:借入金や未払金などのマイナスの財産
- 残る:お墓、墓地の使用権、仏壇・仏具、位牌
- 残る:祭祀承継者としての立場と、年間管理料の負担
この整理から分かるのは、2つの手続きが互いに影響しないという点です。お墓を引き継いだからといって相続放棄ができなくなるわけでもありません。
実家の借入金が心配な方は、放棄の判断とお墓の判断を切り離して考えてください。
参考:e-Gov法令検索「民法(第897条)」
参考:国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」
相続放棄そのものの判断や、放棄したあとに残る管理義務については下記の記事にて詳しく解説しています。

引き継いだあとに手放す方法はある
承継そのものを断りにくくても、引き継いだあとに手放す道は残されています。どの方法が合うかはご家庭の事情によって変わるため、選択肢の全体像から確認しておきましょう。
| 選択肢 | どのような方法か | 向いているケース |
|---|---|---|
| ほかの親族に引き継いでもらう | 名義を変え、お墓はそのまま残す | 守る意思のある親族がいる |
| 墓じまいをする | 墓石を撤去し、遺骨を別の場所へ移す | 引き継ぐ人が見つからない |
| 永代供養に切り替える | 寺院や霊園に管理と供養を任せる | 後継者はいないが供養は続けたい |
| 自宅の近くへ改葬する | お墓を残したまま、近い場所へ移す | 距離が理由で通えない |
こうして整理すると、「引き継ぐか、放棄するか」の二択ではないと分かります。
距離が問題なら移す、後継者が問題なら永代供養に切り替えるというように、悩みの中身によって適した方法が変わるのです。ご自身が引き継ぎたくないと感じている理由を言葉にしてみると、選ぶべき方向が絞られます。
参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
相談者様から「断れないと聞いたので、諦めるしかないと思っていた」という声をよく伺います。実際に多くの方が悩んでおられるのは、断れるかどうかではなく、引き継いだ後に何をすればよいかという点です。
名義人になって初めて、墓地の管理者と正式にやり取りできるようになります。墓じまいや永代供養への切り替えを申し出られるのも、名義人になった方です。承継を「終わり」ではなく「判断できる立場になること」と捉えると、次に取る行動を考えやすくなります。
お墓を引き継ぐとかかる費用と負担

引き継いだ後には、費用と手間の両方が続きます。どのような負担が生じるのかを具体的に知ることで、引き継ぐかどうかの判断材料がそろいます。
年間管理料
お墓を引き継ぐと、墓地の管理者へ年間管理料を納め続けることになります。通路や水道といった共用部分の維持にあてられる費用で、公営霊園・民営霊園・寺院墓地のいずれにも設定されているのが一般的です。
| 墓地の種類 | 運営する主体 | 費用に関する特徴 |
|---|---|---|
| 公営霊園 | 都道府県や市区町村 | 条例や規則で金額が定められ、公表されている |
| 民営霊園 | 宗教法人や公益法人など | 区画の広さや設備によって金額に幅がある |
| 寺院墓地 | 寺院 | 護持会費として納める形が多く、慣習によって異なる |
金額は全国一律ではなく、墓地ごとに定められています。公営霊園なら条例や公式サイトで確認でき、民営霊園や寺院墓地は直接尋ねる必要があります。
例えば、都立霊園の場合、一般埋蔵施設の管理料は1㎡あたり年750円です。4㎡の区画なら年3,000円という計算になります。
引き継ぐ前に、金額・支払先・支払時期の3点を確かめておくと安心です。支払いが滞ると使用許可に影響する場合もあるため、支払い状況もあわせて確認してください。
参考:東京都公園協会「霊園管理料」
出典:東京都公園協会「東京都霊園使用料・管理料・手数料一覧表」
掃除やお墓参りなどの維持管理
費用と並んで重く感じられるのが、掃除やお墓参りといった手間の部分です。年間管理料でまかなわれるのは共用部分までで、ご自身の区画のなかの手入れは使用者の役割とされているのが通例です。
引き継いだ後に生じる手間には、次のようなものがあります。
- 区画内の草取りや落ち葉の片づけ
- 墓石の水洗いと、花立て・線香皿の掃除
- お盆やお彼岸、命日などのお参り
- 遠方の場合は、往復の交通費と移動時間
- 台風や地震のあとの状態確認
5つの項目に共通するのは、いずれも終わりの時期が決まっていないという点です。
負担の感じ方は、お墓までの距離と通う頻度でほぼ決まります。年に何回、片道どのくらいかけて通うことになりそうかを具体的に思い描くと、引き継ぐ現実味が判断しやすくなります。
参考:東京都公園協会「よくあるご質問」
寺院墓地の場合は檀家としての務めがある
実家のお墓が寺院墓地にある場合は、年間管理料に加えて檀家(だんか)としての関わりが続きます。
檀家とは、特定のお寺に所属し、お布施などを通じてそのお寺を支えていく家のことです。寺院墓地は、都道府県知事などの許可を受けた寺院が経営しています。
寺院墓地では、次のような負担が生じることがあります。
- 護持会費として納める、お寺の維持のための費用
- 納骨や年忌法要の際のお布施
- お盆やお彼岸の合同法要への参加
- 本堂の修繕などにともなう臨時の寄付の依頼
挙げた4つは一般的な例で、金額や慣習は寺院ごとに異なります。
公的な基準が定められているものではないため、料金表がない場合も少なくありません。
一方で、法要の相談に応じてもらえる、遺骨の管理を任せられるといった支えのある関係でもあります。負担の面だけで判断せず、どのような付き合いが続いてきたのかを親御さんに確かめてみてください。
参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
名義変更の手続きと手数料
お墓を引き継ぐときは、墓地の使用者を自分へ切り替える名義変更が必要です。承継手続とも呼ばれ、書類をそろえて墓地の管理者へ申請します。
名義人が亡くなっている場合は本人の承諾を得られないため、実務上はこの手続きを済ませてから墓じまいや改葬に進むことになります。
東京都立霊園を例として、必要書類や手数料について見てみましょう。
- 手続きの名称:使用者の変更(承継手続)
- 承継できる人:祭祀主宰者であり、原則として使用者の親族であること
- 主な必要書類
- ①申請者の実印と印鑑登録証明書
- ②申請者の戸籍謄本
- ③名義人と申請者の戸籍上のつながりが確認できる戸籍謄本等
- ④東京都霊園使用許可証(紛失時は直近の管理料の領収書、口座振替なら口座振替通知書)
- ⑤承継使用申請書・誓約書(窓口で記入し実印を押印)
- 書類の有効期限:印鑑登録証明書は発行から3か月以内、戸籍謄本は発行から6か月以内
- 手数料:2,000円(現金)+郵送料として530円分の切手
- 追加で必要になる書類
- 変更理由や承継者によって異なる
- 承継者の指定がない場合は、葬儀一式費用の領収書や法事の施行証明など「祭祀を主宰していること」が分かる書類が必要
- ほかに遺言書の原本、親族の協議成立確認書、疎明(事情説明)・推薦書、家庭裁判所の審判書・調停調書による場合もある
- 相談先:各都立霊園の窓口、または東京都公園協会の霊園課
※2026年8月時点。必要書類も手数料の有無も墓地によって異なるため、この内容はあくまで一例です。
共通しているのは、戸籍でつながりを示すことに加えて、自分が祭祀を主宰していることを示す必要がある点です。
名義人の相続が発生してから年数が経つほど、取り寄せる戸籍の数は増え、葬儀の領収書など当時の資料も見つけにくくなります。
書類は変更理由や承継者によって変わるため、窓口へ行く前に必ず霊園事務所などお墓の管理者へ確認してください。
参考:東京都公園協会「使用者の名義変更」
ご家族が亡くなった後に必要な手続きの全体像と優先順位は下記の記事にて詳しく解説しています。

意外な落とし穴になりやすいのが、管理料の引き落とし口座です。親御さんの口座から自動で引き落とされていると、相続が発生した後に口座が凍結され、気づかないうちに滞納が積み上がっていることがあります。
納入通知書や口座振替通知書を一度見せてもらえば、支払いの全体像はつかめます。お墓の話を切り出しにくい方でも、「支払いの手続きを確かめたい」という入り口なら、親御さんも構えずに応じてくださることが多い印象です。
お墓を引き継ぎたくないときの対処法

引き継ぎたくないと感じたときに取れる方法は、大きく4つに分かれます。それぞれ手間も費用も異なるため、向き不向きとあわせて確認していきましょう。
どの方法を選ぶ場合でも、ご親族との話し合いが前提になります。祭祀承継者は1人でも、お墓に納められているのはご家族にとって大切な方だからです。事後報告で進めると関係がこじれる原因になりかねません。
もっとも、その話し合いを切り出すこと自体が難しいという声もあります。
当メディアの調査で、親に終活をしてほしいと思っても頼みにくい理由を尋ねました。最も多かったのは「親がまだ元気で切り出しにくい」で21.3%です。「お金の話を子からしにくい」が19.3%、「何から頼めばいいか分からない」が18.0%と続きます(当メディア調査/2026年6月・親がご存命の人300名)。
言い出せないまま先送りになっているご家庭は少なくないようです。
ほかの親族に引き継いでもらう
負担がもっとも軽く済むのは、お墓を守る意思のあるご親族に引き継いでもらう方法です。祭祀承継者に続柄の決まりはないため、兄弟姉妹や実家の近くに住むいとこが引き受けてくれる場合もあります。
お墓自体を動かす必要がなく、名義変更と管理料の引き継ぎで手続きは完了します。
話し合いでは、次の項目を決めておくと後のトラブルを防げます。
- 誰が名義人になるか
- 年間管理料を誰が負担するか、分担するかどうか
- お墓参りや掃除をどう分け合うか
- 将来、墓じまいを検討するときに誰が判断するか
- 決めた内容を書面やメッセージで残すかどうか
見落とされやすいのが、費用の分担です。名義人が1人であることと、費用を1人で負担することは別の話として扱えます。
負担が一方に偏ると不満が残りやすいため、金額が小さいうちに取り決めておくほうが関係を保ちやすくなります。
墓じまいをする
引き継ぐ人が見つからない場合の選択肢が、墓石を撤去して墓地を返す墓じまいです。遺骨は別の場所へ移すことになり、法律上は「改葬(かいそう)」にあたるため、市区町村長の許可が必要になります。
| 引き継いで維持する | 墓じまいをする | |
|---|---|---|
| 費用のかかり方 | 毎年、少しずつ続く | 手続きの時期にまとまってかかる |
| 手間 | 掃除やお参りが続く | 手続きを進める間に限られる |
| 遺骨 | 今の場所にとどまる | 別の場所へ移す |
| 元に戻せるか | いつでも見直せる | 原則として戻せない |
| 親族の同意 | 必要になる場面は少ない | 事前の合意が前提になる |
比べてみると、費用と手間の総量だけでなく、後戻りできるかどうかが大きく違うと分かります。
遺骨をいったん移すと、元の墓地へ戻すことは原則としてできません。
遠方で通えない、引き継ぐ人が見当たらないといった事情が続くのであれば、現実的な選択肢のひとつです。ただし、ご親族の意向がそろわないまま進めると、後々の関係に影響します。
判断を急がず、合意を確かめたうえで手続きに入ってください。
参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
永代供養に切り替える
遺骨の管理と供養を、お寺や霊園へ任せる形に切り替えるのが永代供養です。承継者がいることを前提としない仕組みのため、後継者の不在で悩んでいる方に向いています。
合祀(ごうし)は複数の遺骨をひとつのお墓に納める方法で、その後は個別に取り出せなくなるのが通例です。
| タイプ | 遺骨の納め方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 合祀墓・合葬墓 | 最初からほかの方と一緒に納める | 管理者が遺族に代わって供養を続ける |
| 樹木葬 | 樹木や草花を墓標として納める | 個別区画と合同供養のタイプがある |
| 納骨堂 | 主に屋内の施設に収蔵する | 棚式やロッカー式など形式が幅広い |
3つに共通するのは、引き継ぐ人がいなくても供養が続く仕組みである点です。
墓石を建てないタイプであれば、一般的なお墓より初期の費用をおさえられる場合もあります。ただし金額は施設や形式によって幅があるため、候補となる霊園や寺院の料金表を取り寄せて比べてください。
契約の前には、個別に安置される期間と、その後の扱いを確かめておきましょう。「永代」という言葉から永久を想像しがちですが、一定の期間を過ぎると合祀へ移るタイプもあります。
ご親族の同意を得たうえで進めることも欠かせません。
参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
自宅の近くにお墓を移す(改葬)
お墓は残したいけれど遠方で通えないという場合は、自宅の近くへ移す改葬という方法があります。手続きの流れは墓じまいとほぼ共通で、移転先を決めたうえで、今お墓がある市区町村で許可を受ける形です。
移す前に確認しておきたい項目を挙げます。
- 移転先の永代使用料と年間管理料はいくらか
- 今の墓石を運んで使えるか、新しく建てる必要があるか
- 移転先に宗派の指定があるか
- 今の墓地を撤去する費用はいくらかかるか
- ご親族が移転に同意しているか
5つを確認すると、改葬にも新設に近い費用がかかる可能性があります。
それでも通える距離になれば、掃除やお参りの負担は大きく下がります。
引き継ぎたくない理由が距離にあるなら、手放す前に移すという選択もあるのです。
参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
親族の合意を得る場面でつまずくご家庭は少なくありません。反対される理由は、費用そのものよりも「相談されなかったこと」にあると感じる場面が多くあります。
方針が固まってから伝えるのではなく、検討を始めた段階で一度共有しておくと、同じ結論でも受け止められ方が変わるのです。お盆や年末年始など、親族が集まる機会を使うと切り出しやすくなります。
お墓を引き継ぐ人がいないまま放置するとどうなるか

決められないまま何年も過ぎてしまうご家庭もあります。放置されたお墓がどのような扱いになるのかを知っておくと、落ち着いて検討を進められます。
引き継ぐ人がいないお墓は無縁墓(むえんばか)として扱われる
管理する人がいなくなったお墓は、「無縁墓(むえんばか)」として整理の対象になるおそれがあります。墓地の管理者が定められた手続きを踏むと、遺骨を移して区画を返させることができるためです。
| 段階 | 手続きの内容 |
|---|---|
| 1 | 墓地の管理者が、使用者や縁故者の所在を確認する |
| 2 | 官報に掲載し、無縁墳墓等の見やすい場所に立札を設置する |
| 3 | 1年間、申し出を待つ |
| 4 | 申し出がなかった旨の書面などを添え、市町村長へ改葬許可を申請する |
4段階を要することから分かるように、手続きは短期間で終わるものではありません。
それでも、総務省が公営墓地・納骨堂を持つ市町村に行った調査には目を向けたいところです。無縁墳墓等が1区画以上ある(疑いのあるものを含む)と回答した割合は58.2%にのぼりました。
管理する人が途絶えたお墓は、すでに全国で生じている課題といえます。
管理料の滞納が続くと遺骨が合祀される場合がある
年間管理料の滞納が長く続くと、使用許可が取り消され、遺骨が合祀墓(無縁塚:むえんづか)へ移されるおそれがあります。
都立霊園では、5年間の滞納が東京都霊園条例に基づく使用許可の取消対象になると案内されています。
こうした事態を避けるには、次のような備えが有効です。
- 引っ越したら、墓地の管理者へ住所変更を届け出る
- 支払方法を口座振替にして、払い忘れを防ぐ
- 通帳や納入通知書で、毎年の支払いを確認する
- 支払いが難しくなったら、放置せず管理者へ相談する
- 引き継ぐか迷っている間も、連絡が取れる状態は保っておく
5つに共通するのは、連絡が取れる状態を保つという考え方です。
何年の滞納でどう扱われるかは、墓地の規則や自治体の条例によって異なります。それでも管理者と連絡がつく限り、急に整理が進む事態は考えにくいといえます。判断を保留したい時期があっても、連絡だけは絶やさないようにしてください。
参考:東京都公園協会「管理料のお支払」
無縁墳墓の手続きには官報への掲載と1年間の公告が必要で、墓地の管理者にとっても負担の大きい作業です。そのため実務では、いきなり整理へ進むのではなく、連絡先をたどる作業から始まります。
裏を返せば、住所変更の届け出を出しておくだけで、突然お墓が整理される事態をかなり防げるのです。引っ越しの際に忘れられがちな手続きですので、転居届を出すタイミングで思い出していただければと思います。
墓じまいの流れと費用

墓じまいは、遺骨の移転先を決めてから墓地を返すまでに5つの段階を踏みます。全体の流れをつかんでおくと、どこで専門家の手を借りればよいかも見えてきます。
遺骨の受け入れ先を決める
遺骨の移転先が決まらないと、その後の手続きは進められません。改葬の許可を申請する際に、受け入れ先を示す書類の提出が求められるためです。
| 受け入れ先 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 合祀墓・合葬墓 | 管理者が遺族に代わって供養を続ける | 後継者がいない |
| 樹木葬 | 樹木や草花を墓標にする | 自然な形での供養を望む |
| 納骨堂 | 屋内に収蔵し、天候に左右されない | 都市部に住み、通いやすさを重視する |
| 散骨 | 海などに撒く。事業者に依頼するのが一般的 | お墓を持たない形を選びたい |
| 手元供養 | 小さな骨壺などで自宅に安置する | 遺骨を身近に置いておきたい |
表の5つは、費用の水準も、供養が続く仕組みも異なります。
特に確かめておきたいのが、承継者を必要としない形式かどうかという点です。ここを見落とすと、次の世代で同じ悩みが繰り返されかねません。
改葬の申請では、受け入れ先が発行する証明書類の提出を求められます。散骨や手元供養は受入証明書が発行されないため、自治体ごとに扱いが異なります。
事前に窓口へ確認してください。候補が固まった段階で、書類を出してもらえるかどうかも確認しておくと手続きが滞りません。
参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
参考:港区みなと保健所「墓地、埋葬等に関する法律の手引」
墓地の管理者に相談する
受け入れ先の見当がついたら、今の墓地の管理者へ早めに伝えましょう。改葬の申請には、そこに遺骨が納められていることを管理者が証明する書面が必要だからです。
寺院墓地の場合は、檀家をやめる離檀(りだん)の相談も兼ねます。
相談の際は、次の内容を伝えるとやり取りが進みやすくなります。
- 墓じまいを検討している事情(遠方に住んでいる、後継者がいないなど)
- 移転先の候補
- おおよその希望時期
- 必要書類と、発行にかかる期間
- 指定の石材店があるかどうか
伝える項目を整理しておくほど、管理者側も準備に取りかかりやすくなります。
逆に、事前の相談を省いて話を進めた結果、感情的な行き違いが生じた例も見受けられます。長く関わってきた寺院であればなおのこと、事情を丁寧に伝える姿勢が欠かせません。
参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
改葬許可の手続きをする
遺骨を移すには、今お墓がある市区町村長の改葬許可が必要です。墓地、埋葬等に関する法律第5条で定められた手続きで、許可が下りると改葬許可証が交付されます。この証明書を受け入れ先へ提出することで、納骨できるようになります。
| 手順 | 内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| 1 | 改葬許可申請書を入手する | お墓のある市区町村 |
| 2 | 埋蔵の事実を証明する書面をもらう | 今の墓地の管理者 |
| 3 | 受け入れ先の証明書類をもらう | 移転先の霊園・寺院 |
| 4 | 書類をそろえて申請する | お墓のある市区町村 |
| 5 | 改葬許可証を受け取る | お墓のある市区町村 |
注意したいのは、申請先がお住まいの市区町村ではなく、お墓の所在地の市区町村である点です。
申請書には、故人の本籍・住所・氏名・性別のほか、埋葬または火葬の場所と年月日を記入します。改葬の理由や移転先の記入も必要です。
先祖代々のお墓では、こうした情報を集めるところから始まることもあるため、時間に余裕をもって進めてください。
なお、申請する方が墓地の使用者ではない場合、使用者の承諾書の添付を求められます。ご自身が名義人になっていないうちは手続きが進まないため、名義変更を先に済ませておくと迷いがありません。
参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
参考:港区みなと保健所「墓地、埋葬等に関する法律の手引」
墓石を撤去して墓地を返還する
改葬許可証がそろったら、閉眼供養(へいがんくよう)を行って遺骨を取り出し、石材店へ墓石の撤去と整地を依頼します。閉眼供養は、魂抜きとも呼ばれる法要です。整地が終われば墓地を返し、使用権の抹消手続きで完了します。
この段階で行う作業を順に挙げます。
- 閉眼供養を依頼し、日程を調整する
- 遺骨を取り出す
- 石材店へ墓石の撤去と整地を依頼する
- 墓地を返還し、使用権の抹消手続きをする
- 受け入れ先へ改葬許可証を提出し、納骨する
墓じまいでは、寺院・石材店・自治体・移転先とさまざまな関係者との打ち合わせが必要です。墓地によっては石材店が指定されている場合があるため、見積もりを取る前に管理者へ確認しておくと二度手間を避けられます。
また、閉眼供養に当たる儀式を実施しない宗派もあるため、事前に親御さんにお話を伺っておくのが必須です。
なお、お墓を建てるときに納めた土地の使用料を永代使用料と呼びますが、返還の取り扱いは墓地の規則によって定められています。
この点も、返す前に確かめておきたい項目です。
参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」
墓じまいにかかる費用の目安
墓じまいの費用は支払先ごとに分けると全体像がつかめます。
| 内訳 | 支払先 | 目安・変動要因 |
|---|---|---|
| 行政手続き | 市区町村・管理者 | 改葬許可申請は無料〜数百円 証明書発行や名義変更で数百円〜2,000円程度 |
| 墓石の撤去・整地 | 石材店 | 区画の広さ、重機が入れるか、立地 |
| 閉眼供養のお布施 | 寺院 | 寺院や地域の慣習 |
| 受け入れ先の費用 | 霊園・寺院 | 合祀墓、樹木葬、納骨堂などの形式 |
| 離檀料 | 寺院 | 法律上の支払い義務はない |
※2026年8月時点。金額は自治体・墓地・石材店によって異なります。
金額がはっきりしているのは行政手続きの部分です。
八王子市は改葬許可申請を無料とし、都立霊園では改葬許可申請に添える使用証明書が400円、名義変更の手数料が2,000円と公表されています。
名義人が故人のままの場合は墓じまいを進められないため、承継の手続きが発生する点にも注意してください。
一方、費用の大半を占める墓石の撤去・整地には公的な統計も目安額もありません。
公営墓地でも区画を更地に戻す原状回復は使用者負担が原則で、例えば岡山市は「原状復帰が原則」と明記しています。支払い済みの使用料は原則戻りませんが、磐田市のように返還時に50%を還付する自治体もあります。
指定石材店がなければ、撤去費・処分費・運搬費の内訳を分けた見積もりを複数社から取り、比較してください。離檀料に支払い義務はなく、明確な基準もありません。
納得できない金額なら寺院と話し合い、消費生活センター(188)にも相談できます。
参考:八王子市「改葬(お墓を移す)に関する手続き」
参考:岡山市「市営墓地が不要となったとき」
参考:磐田市「市営墓地」
参考:神奈川県「お寺から高額請求!?お墓の引っ越し費用、知っていますか?」
見積もりで差が出やすいのは、墓石の撤去にかかる部分です。重機が入れない山間部や、区画が広く石の量が多いお墓では金額が上がりやすくなります。同じ地域でも、条件によって倍近い開きが出ることがあります。
1社だけで決めてしまい、後になって金額の開きに気づいたというご相談も少なくありません。見積もりを依頼する時点で「他社とも比べたい」と伝えておくと、断りづらさを感じずに済みます。
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|---|---|
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なお、墓じまいの手配そのものは専門業者が、祭祀承継をめぐる争いの解決は弁護士が担う領域です。個別の税額計算についても税理士の業務にあたるため、必要に応じて専門家と連携しながら進めます。
まずは現状の整理だけでもご相談ください。
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お墓の引き継ぎに関するよくある質問

お墓の引き継ぎについて、相談の場で寄せられることの多い質問にお答えします。
参考:国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」
参考:国税庁「相続税法基本通達 第13条《債務控除》関係 13-6」
出典:大阪市「粗大ごみ処理手数料一覧表」
出典:仙台市「五十音で引くワケ方事典(ハ行)」
まとめ:お墓を引き継ぎたくないときは、家族で早めに話し合いを

お墓は相続財産とは別に扱われる祭祀財産で、指定されると原則として断れません。それでも、引き継いだ後に手放す方法は複数あります。
ここまでの内容から、押さえておきたい点をまとめます。
- お墓は遺産分割の対象外で、相続放棄をしても手放せない
- 祭祀承継者に続柄の決まりはなく、誰が担っても差し支えない
- 引き継ぐと、年間管理料・維持の手間・名義変更の手続きが生じる
- 引き継いだ後でも、墓じまいや永代供養へ切り替える道がある
- どの方法が合うかは、ご家庭の事情と墓地の規則によって変わる
結論を急ぐより、情報をそろえるほうが先です。
お墓のある場所、管理料の金額、誰が支払ってきたのかを確かめるところから始めてみてください。
当メディアの調査で、実家の今後に向けてこれまでに行ったことを尋ねました。「特に何もしていない」と答えた方は79.3%にのぼっています(当メディア調査/2026年6月・親が持ち家の人300名)。多くのご家庭が動き出せていない状況です。裏を返せば、少しずつ確認を進めるだけでも、判断の材料は着実に増えていきます。
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